医療法人を売却する際にかかる税金とは?売却価格の決め方についても解説!

医療法人を売却する際にかかる税金とは?売却価格の決め方についても解説!

「医療法人の売却では税金が発生する?」
「出資持分譲渡や基金譲渡で発生する税金の種類とは?」

と疑問をお持ちの方がいるかもしれません。

医療法人の売却方法は、持分あり医療法人か持分なし医療法人かによって変わってきます。

そのため、それぞれの医療法人が活用できる売却方法について理解することが大切です。

今回の記事では、医療法人を売却する方法や医療法人を売却する際にかかる税金、医療法人の売却に関するよくある質問などについて解説します。

目次

医療法人は売却できる?

医療法人を売却できるかは「出資持分の有無」で異なります。

厚生労働省の定義によると、持分とは「定款の定めるところにより、出資額に応じて払戻し又は残余財産の分配を受ける権利」のことです。

出資持分については、以下の記事を参考にしてください。

関連記事:医療法人における出資持分とは?確認方法や相続・譲渡について解説!

医療法人は持分の有無によって大きく「持分あり医療法人」と「持分なし医療法人」の2種類に分けられます。

持分あり医療法人 定款に持分の定めを規定している
持分なし医療法人 定款に持分の定めを規定していない

以下で、それぞれのケースを確認していきましょう。

参照:厚生労働省「第2章 持分によるリスクについて

持分あり医療法人の場合

持分あり医療法人は財産権を自由に売却することが可能です。

売却先は個人のみならず、一般社団法人やNPO法人、株式会社なども対象となります。

持分なし医療法人の場合

持分なし医療法人は財産権を売却することはできません。

財産権をもつこと自体が認められていないため、売却することができないのです。

ただし、分割制度や事業譲渡という売却スキームを使うことはできます。

そのため、持分の有無によって利用できる手段を理解した上で、法人に最適な手段を検討することが大切です。

医療法人を売却する方法

医療法人を売却する場合、主に以下の手段が用いられます。

  • 営権譲渡
  • 持分譲渡
  • 基金譲渡
  • 吸収合併
  • 吸収分割
  • 事業譲渡

医療法人の種類によって利用できる売却方法が異なるため注意が必要です。

以下の表で、医療法人の種類ごとに利用できる手段をまとめました。

医療法人の種類 利用できる売却補法
持分あり社団医療法人 ・持分譲渡
・経営権譲渡
・吸収合併
・事業譲渡
持分なし社団医療法人(基金拠出あり) ・基金譲渡
・経営権譲渡
・吸収合併
・吸収分割
・事業譲渡
持分なし社団医療法人(基金拠出なし) ・経営権譲渡
・吸収合併
・吸収分割
・事業譲渡
財団医療法人 ・経営権譲渡
・吸収合併
・吸収分割
・事業譲渡
特定医療法人 ・経営権譲渡
・吸収合併
・事業譲渡
社会医療法人 ・経営権譲渡
・吸収合併
・事業譲渡

以下でそれぞれの売却方法について詳しく確認していきましょう。

経営権譲渡

経営権譲渡とは、買い手に経営権を譲渡する売却方法です。

経営権譲渡の場合、医療法人は存続させて、売り手側は買い手側のグループとして医療法人の経営に携わります。

財団医療法人も役員の辞任、および評議員の入れ替えを行うことで、経営権を売却することができます。

持分譲渡

持分譲渡とは、社員が退社するタイミングで買い手側に持分を譲渡する売却方法です。

持分あり社団医療法人のみが利用できる売却方法になります。

持分譲渡の対価(もしくは持分の払い戻し)は、M&Aの対価という位置付けと言えるでしょう。

基金譲渡

基金譲渡とは、買い手側に基金返還請求権を譲渡する売却方法です。

この方法は、基金拠出がある持分なし社団医療法人(基金拠出型医療法人)のみが利用できます。

ちなみに基金拠出型医療法人とは、持分なし社団医療法人の資金調達方法として、基金制度を利用し設立された医療法人のことです。

基金には返済義務があるため、定款の定めに則って拠出者に返済する必要があります。

吸収合併

吸収合併とは、2つの医療法人を統合する売却方法で、M&Aの手法のひとつです。

吸収合併は、全ての医療法人で実施することが認められています。

吸収合併の他に「新設合併」という手段もあります。

吸収合併 存続する医療法人が消滅する医療法人と統合する形で引き継ぐ
新設合併 医療法人を新設する形で、2つの法人を統合する

新設合併を実施する場合は複雑な手続きが発生するため、医療法人の売却時は「吸収合併」が用いられるケースが多いです。

吸収分割

吸収分割とは、医療法人の事業を一部分割して、買い手側の医療法人に移管する売却方法です。

買い手側の状態によって吸収分割の呼び方が異なるので注意しましょう。

買い手側の状態 売却方法の呼び方
既存の法人 吸収分割
新設法人 新設分割

吸収分割を実施する場合、権利義務がまとめて買い手側に承継されます。

分割を実行する際は、影響を受ける従業員や債権者についても考慮しなくてはいけません。

吸収分割が認められているのは、持分なし社団医療法人(基金拠出あり)、持分なし社団医療法人(基金拠出なし)、財団医療法人のみです。

事業譲渡

事業譲渡とは、事業における権利義務の一部、もしくは全部を買い手側に移管する売却方法です。

移管する権利義務の例として、以下が挙げられるでしょう。

  • 医療機器・各種設備・内装
  • 土地・建物
  • 従業員の雇用契約
  • 卸売業者・納入業者との取引契約
  • 借地権・借家権・店舗賃借権など

事業譲渡を行う場合、売り手側は廃止届出、買い手側は新規の開設許可などの手続きに対応する必要があります。

医療法人を売却する際にかかる税金

それでは、医療法人を売却する際はどのような税金が発生するのでしょうか?

以下で主な税金の種類を紹介します。

※税金に関する詳細情報は税務署、及び専門家にご相談ください。

経営権譲渡

経営権を譲渡する場合、配当所得(払戻額-出資額)に対する所得税が発生します。

所得税は、配当所得に対して20.42%の税率で算出します。

なお、役員が退職金を受け取る場合においても、所得税および住民税が課せられるので注意してください。

持分譲渡

持分譲渡の場合、持分の譲渡によって売却益(譲渡所得)が発生します。

この譲渡所得に対して、以下の税金を支払う必要があります。

  • 所得税
  • 住民税

譲渡所得(譲渡価格-出資額)に対して、所得税は15.315%の税率、住民税は5%の税率で計算を行います。

基金譲渡

基金拠出型医療法人の場合、額面での譲渡となります。

そのため、一般的には譲渡所得は発生しません。

吸収合併

吸収合併を実施する場合は、譲渡所得や法人税が発生します。

医療法人同士が統合する場合でもこれらの税金が発生するため注意が必要です。

吸収分割

吸収分割を実施する場合も、分割時に発生する法人税を事前に取り決めておく必要があります。

事業譲渡

事業譲渡を実施する場合、所得税と住民税が発生します。

所得税は税率5%〜45%、住民税は税率10%で計算してください。

なお、法人税法に基づく特例が適用されるケースもあるので、条件を満たしているか確認することをおすすめします。

医療法人の売却に関するQ&A

ここでは、医療法人の売却に関するよくある質問を紹介します。

医療法人の売却価格はどのように決める?

一般的には一定の基準で評価した医療法人の価値をベースに、売り手と買い手が交渉しながら売却価格を決めていきます。

医療法人の価値を評価する方法はさまざまですが、現在は「時価純資産+営業権」で価値が決められることが多いです。

例えば、時価純資産「4,000万円」、営業利益「2,000万円」の場合、価値評価額は「1億円」となります。

時価純資産は事業の評価額であるのに対し、営業権は人材力や技術、ノウハウ、集客力などが評価の対象です。

医療法人の不動産売却時に許可は必要?

医療法人が不動産を売却する場合、都道府県庁の許可は必要ありません。

ただし、社員総会もしくは理事会の決議が必要になる可能性があるため注意が必要です。

また、利益相反取引に該当する場合は、理事会における事前承認が必要です。

記事まとめ:医療法人についてのご相談は七福計画株式会社へお任せください

今回の記事では、医療法人を売却する方法や医療法人を売却する際にかかる税金、医療法人の売却に関するよくある質問などについて解説しました。

医療法人を売却する方法は、医療法人の種類によって変わってきます。

持分譲渡や経営権譲渡、吸収合併など売却方法にはさまざまなものがあるため、自法人に最適な方法を選ぶことが大切です。

医療法人の売却に関してお困りごとがございましたら、七福計画株式会社にご相談ください。

当社は医療法人をはじめ、さまざまな法人様の経営や資金に関するサポートを提供してきました。

累計相談件数は3,000件以上にもおよび、これまで培ってきた支援のノウハウを活かしたサポートを実現します。

また、公式サイトでは医療法人向けのお役立ちコラムも公開していますので、ぜひチェックしてみてください。

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