医療法人の法人税の税率は?普通法人との違いなどについて詳しく解説

クリニックでも個人開業と医療法人とでは法人税率が大きく異なる?!

「医療法人の法人税の税率は?」
「普通法人と何がどう違う?」

という疑問をお持ちではありませんか?

本記事では、上記の疑問を下記に沿って解説します。

「医療法人の法人税率」
「医療法人と個人事業・普通法人との法人税率や所得税率の違い」
「医療法人化の税金におけるメリットとデメリット」

医療法人の法人税について詳しく知りたい人に向けて詳しく紹介していますので、ぜひ参考にしてください。

目次

医療法人の法人税率【法人税率と所得税率】

まずは、医療法人の法人税率と所得税率について紹介します。

法人税率

法人税は、比例税率となっているため、所得が増加しても税率が変化することはありません。

事業開始時期や利益に応じて、税率が決められます。

なお、特別医療法人に該当すると判断された場合は、非営利組織とみなされ、一般的な普通法人よりも低い税率が適用されます。

具体的な金額については、以下の表を参考にしてください。

開始事業年度 年800万円以下の部分 年800万円超の部分
平成28年4月1日以後 15% 23.40%
平成30年4月1日以後 15% 23.20%
平成31年4月1日以後 15%(※19%) 23.20%
令和4年4月1日以後 15%(※19%) 23.20%

※事業年度開始の日前3年以内に終了した各事業年度の所得金額の年平均額が15億円を超える場合

参考:No.5759 法人税の税率|国税庁

所得税率

所得税は、累進課税となっており、所得が増加すると、それに伴って最大45%まで所得税率が増加します。

しかし、医療法人化した場合には、所得税が適用されず、法人税が適用となります。

具体的な金額については、以下の通りです。

課税される所得金額 税率 控除額
1,000円から1,949,000円まで 5% 0円
1,950,000円から3,299,000円まで 10% 97,500円
3,300,000円から6,949,000円まで 20% 427,500円
6,950,000円から8,999,000円まで 23% 636,000円
9,000,000円から17,999,000円まで 33% 1,536,000円
18,000,000円から39,999,000円まで 40% 2,796,000円
40,000,000以上 45% 4,790,000円

参考:No.2260 所得税の税率|国税庁

医療法人の法人税率【個人事業と普通法人との違い】

医療法人は非営利法人の一種であり、営利目的の個人事業や普通法人とは税制が異なります。

ここからは、個人事業と普通法人と医療法人の税率の違いを具体的に解説していきます。

個人事業との違い

医療法人と個人開業の税制の違いを以下の表に示します。

税区分 医療法人 個人開業
法人税/所得税 課税所得が800万円以下:15%

課税所得が800万円超:23.2%

課税所得額により変動(累進課税、5~45%)
地方法人税 17.3%または20.7% 該当なし
住民税 10%+均等割り5,000円
事業税 3.4%~5.23% 5%(事業業所得金額290万円以下の場合は納税義務なし)

個人開業の場合、所得税・住民税・事業税を支払う必要があります。

所得税は累進課税で5%~45%で住民税は一律で10%です。さらに、事業税は非課税限度の290万円を超えた分に対して5%の税金がかかります。

一方、医療法人の場合、法人税・地方法人税・住民税・事業税の4種類が課されます。

出資金1億円以下の法人であれば、所得が800万円以下の部分が15%、800万円超の部分が23.2%が課税されることになります。

また、地方法人税および住民税は法人税額の17.3%または20.7%、事業税は所得の3.4%から5.23%の範囲です。

これらの違いから、個人開業の場合は税金は最大で所得の60%程度ですが、法人では最大でも27%程度となります。

このように、所得金額が大きくなると個人事業主と医療法人の間で、税負担に大きな差が生じることが分かります。

普通法人との違い

医療法人と普通法人の間にも、税制には違いが存在します。

まず普通法人の税率は以下の通りです。

所得金額 税率
800万円以下の場合 19%
800万円を超える場合 23.2%

他方、医療法人の法人税は以下のようになっています。

資本が1億円以下の医療法人 年間所得800万円以下の部分:19%
年間所得800万円超の部分:23.2%
資本金1億円超の医療法人 23.2%
特定医療法人 19%

参照:No.5759 法人税の税率|国税庁

このように、一般法人と医療法人はいずれも法人税率が年間800万円以下は19%、それ以上の部分は23.3%となっており、税率が同じであることが分かります。

ただし、国税庁長官の承認を受けた特定医療法人の場合は、法人税が一律で19%の軽減税率が課されるので税負担が小さくなります。

結論として、一般法人と医療法人は税率が同じですが、特定医療法人化すると一般の法人よりも納税額を低く抑えられます。

特に収入が多い医療法人の場合、特定医療法人化による税金の負担の軽減を見込めることが分かるでしょう。

医療法人化した場合の税金におけるメリットとデメリットについて

 

医療法人化した場合の税金におけるメリット・デメリットを紹介します。

必ずしもどちらが優れていることはないため、以下を参考にし、自分自身の所得や事業規模などから総合的に判断してください。

メリット

法人化することの最大のメリットは、多様な税金の負担を軽減することができることです。

具体的には、親族を理事に配置することで、役員報酬という形で給料を与えられることによる所得の分散や、院長が理事長を兼任することで、所得区分が変更されて給与所得控除が適用されることなどがあります。

金銭的なメリットの他にも、介護事業所などを含めた複数の事業所を運営できることで事業拡大が図れたり、社会的信用度の向上に繋がったりします。

今後、事業を拡大していきたい方や融資を受けたい方には、大きなメリットと言えるでしょう。

デメリット

一方で、法人化によるデメリットもいくつかあります。

例えば、法人として事業を経営するため、決められた期間内に事業報告書を作成する必要があったり、法人の財産と個人の財産が分類されるため、資金の自由度が制限されてしまったりというデメリットが挙げられます。

資金の扱いや事務作業の煩雑化だけではなく、法人として社会保険や厚生年金への加入が義務付けられるため、保険料の負担が増加します。

医療法人の経費に計上できるもの

医療法人において課税金額を正確に把握し税の負担を軽減するには、どういった出費を経費計上できるのかや、法人税以外にどういった税金が課されるのかを知っておく必要があります。

そこで、ここからは医療法人が経費に計上できる費用や、法人税以外の税金について紹介していきます。

材料費

医療用品、薬品、消耗品といった日常の診療で使用する材料の購入費用を指します。

福利厚生費

従業員の退職金積立金、健康保険料などの福利厚生費は損金算入が可能です。

設備費

新しい医療機器の購入費用や施設の改修工事費用のことです。

交際費

ほかの病院の先生との会食費用や、お見上げ・お歳暮・手土産などにかかった費用は経費計上が可能です。

ただし、業務とは関係のない会食などの費用を偽って計上できるため、税務調査で注目されやすい箇所です。

領収書には会った相手や理由、人数、相手の人数や住所といった情報を書いておくようにしましょう。

出張費

学会参加のために発生した交通費や宿泊代は、出張費としての計上が可能です。

会議費

貸会議室のレンタル料やドリンク、お菓子代などを損金算入できます。

人件費

スタッフの給料や賞与、社会保険料は確定申告の際に損金算入が可能です。

その他、必要経費として計上できる可能性があるもの

上記で挙げた以外にも、車両購入・維持費用や家電購入費用を、必要経費として計上できる可能性があります。

車両購入・維持費用については、車両本体の購入費用やガソリン代などの維持費用を経費計上可能です。

ただし、通勤や訪問診療といった業務用に使用する場合に限られ、私的な利用の分は経費計上できません。

家電購入費用に関しては、待合室に設置するテレビやスタッフルームの電子レンジなど、業務上利用する家電の場合は経費計上が認められます。

医療法人の法人税以外の税金について

法人税や住民税以外に医療法人に課される税金として、消費税・事業税・保険料・固定資産税・贈与税・相続税が挙げられます。

医療法人を経営するうえで、決して無視できないのでここで知っておきましょう。

消費税

医療機関では、健康保険適用の診療に関しては消費税の対象外です。

しかし、保険適用外の診療行為や自費診療、物品販売による収入等については消費税の課税対象となります。

原則として、保険適用の診療以外はすべて、消費税の課税対象になると考えておく必要があります。

消費税の計算方法には原則課税と簡易課税の2種類が存在し、どちらが有利になるかを判断する必要があります。

医療法人においては、課税対象となる取引の判断や非課税取引の取り扱いで、消費税の計算・申告は複雑になる傾向があります。

税務に関する知識や経験がない状態で計算や申告を行うと、高確率で誤りが生じ、税務調査で指摘されることになりかねません。

そのため計算や申告、税の負担を軽減する対策などを専門家に相談するのが一般的です。

事業税

都道府県によって課される税金です。

都道府県が定める控除や軽減税率を、税の負担の軽減に活用できる場合があります。

保険料

従業員の加入状況を適切に管理し、不必要な保険料の支払いを避けることで支出を抑えられます。

固定資産税

医療法人においても、土地や建物、医療機器などに対して固定資産税がかかります。

固定資産税は法人税や消費税と比較するとインパクトが薄いかもしれませんが、固定資産の処理方法や購入時期により税額が変わる可能性があり、税の負担が軽減される可能性があります。

贈与税・相続税

医療法人を親族に相続もしくは贈与した際に、贈与税や相続税が発生します。

医療法人は出資者が財産権を持つ「持分あり」と、財産権のない「持分なし」に分けられます。

持分ありの場合、親族等に医療法人の所有権を引き渡す際に相続税が発生します。他方、持分なしの場合には相続税は発生せず、代わりに贈与税が課されます。

相続税もしくは贈与税に関しては、適切に対応することで非課税にすることも可能です。

そのためには、所定の条件を満たす必要があり、専門家のアドバイスに従った税の負担を軽減する対策が必要となります。

経営のお悩みは七福計画株式会社にご相談ください

医療法人の税務についてお困りなら、七福計画株式会社にご相談ください。

七福計画株式会社は金融のプロ集団によって構成される会社で、医療法人の税の負担を軽減する仕組みについて精通しております。

財務状況に合わせた様々な税の負担を軽減する手段や相続、その他経営についてお悩みをうかがったうえで、最適なご提案をさせていただきます。

また、役員の退職金準備方法や保険を活用した税の負担の軽減、財務体質の強化など、経営強化のために行いたいことで幅広くアドバイスできますのでお気軽にご相談ください。

記事まとめ

この記事では、医療法人の法人税率の特徴や、個人事業や普通法人との税率の違い、さらには税金の負担を軽減させるポイントについて解説しました。

医療法人の税務は複雑でほかのビジネス形態とは税制が異なるので、正しい知識を持ったうえで納税や税の負担を軽減する対策に取り組む必要があります。

専門家の知見がなければ対応が難しいのが現実なので、経験豊富な専門家の力を借りて税務に取り組むのがおすすめです。

医療法人の税務は困難ではありますが、法人税やその他の税金について、適切な知識を持ち対応すれば、税負担を減らすことも可能です。

この記事を参考にし、医療法人の税務に関する取り組みを開始していていただければと思います。

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