
医療法人における資金調達の方法とは?代表的な調達先を紹介!
「医療法人の運転資金はどれくらい必要?」
「医療法人はどこから融資を受けられる?」
と疑問をお持ちの方はいませんか。
医療法人における資金調達方法には、金融機関からの融資や医療機関債、MS法人など、いくつかの手段があります。
資金調達方法でお悩みの方は、まずどのような手段があるかを理解することが大切です。
今回の記事では、医療法人における資金の扱いをはじめ、医療法人における資金調達の方法、資金調達先などについて解説します。
医療法人における資金(資本金)の扱いとは?
まずは、医療法人における資金の扱いについて確認しておきましょう。
資金(資本金)とは、事業を始める際や運用する際に必要になる金銭のことです。
設立者が用意した自己資金のほか、株主や投資家などから集めた資金も含まれます。
医療法人においては、資本金の扱いが異なるため注意が必要です。
持分あり医療法人は資本金を有することが認められていますが、持分なし医療法人は基本的に資本金を持ちません。
医療法人では、資本金の代わりに「基金」が用いられます。
医療法人における資本金の捉え方については、以下の記事を参考にしてください。
関連記事:医療法人における資本金の捉え方とは?平均額や調べ方を解説!
基金とは
医療法人における基金とは、医療法人に拠出された金銭のことです。
医療法人が運営に必要なお金を用意する際は、基金という形態が用いられます。
国税庁のホームページによると、基金は定款の定めにより金銭の返還義務を負うものとされています。
このように基金には返済義務があることから、医療法人に対する一時的な貸付金と捉えられるでしょう。
参照:国税庁「基金拠出型の社団医療法人における基金に関する法人税及び消費税の取扱いについて(照会)」
医療法人運営に必要な資金(基金)の目安
それでは、医療法人はどれくらいの資金を調達する必要があるのでしょうか?
医療法人の経営状況や規模、従業員数などによっても変わってきますが、基本的には「運転資金の2ヶ月分」が必要と言われています。
保険診療料の入金は翌々月に行われるためです。
報酬を受け取るまでの運営を行うために、最低でも運転資金の2ヶ月分を用意しましょう。
医療法人における資金調達の方法
医療法人は株式を発行することが認められていません。
とはいえ、株式・社債以外の方法で資金調達を行うことは可能です。
複数の方法を組み合わせるなどして、必要な資金を集めましょう。
- 金融機関からの融資
- 医療機関債
- リースバック方式
- 診療報酬債権流動化
- シンジケート・ローン
- コミットメント・ライン
- MS法人
以下で、医療法人における資金調達の方法を詳しく説明します。
金融機関からの融資
医療法人における代表的な資金調達の方法は、銀行などの金融機関から融資する方法です。
金融機関は財務状況や信用情報を把握しており、資金調達に関する助言を得られる可能性があります。
また、一度に多額の借入が可能で返済期間も長いため、長期的な資金調達の方法に向いています。
しかし、担保がない場合や信用度が低い場合は、必ずしも融資を受けられるとは限りません。
また、借入できた場合でも信用度が低い方が金利が高くなりやすいです。
医療機関債
厚生労働省の資料によると、医療機関債は「医療機関を開設する医療法人が、民法上の消費貸借として行う金銭の借入れに際し、金銭を借入れたことを証する目的で作成する証拠証券」と定義付けられています。
医療機関債の仕組みは以下のようにシンプルです。
- 購入者に資金を払い込んでもらう
- 医療機関債の証書を交付する
- 期間満了時に元金と証書を返却する
ただし、全ての医療法人が利用できる訳ではなく、1億円以上は監査が必要、3年連続で黒字などの条件が定められています。
参照:厚生労働省「「医療機関債」発行等のガイドラインについて」
リースバック方式
リースバック方式とは、医療機器や不動産を売却して資金を調達する方法です。
売却後はリース料を支払うことで、そのまま医療機器や不動産を利用できる仕組みになっています。
リース後は医療法人の資産ではなくなるため、総資産利益率を上昇させることが可能です。
また、税金や保険料の支払いは発生せず、メンテナンス費用もかかりません。
しかし、医療機器などの状況によっては売却できない可能性もあり、リース料金を確実に支払える確実性も求められます。
診療報酬債権流動化
診療報酬債権流動化とは、医療機関がもつ診療報酬債権を売却して資金を調達する方法のことです。
通常、保険請求金は翌々月に支払われるため、医療法人が資金を手にするまでにはタイムラグが生じます。
そこで将来支払われる診療報酬を担保にすることで、早期に現金化することを実現する仕組みです。
一定の事由以外は診療報酬は必ず支払われるため、信用度の高い債権と認識されています。
手数料も低いため、短期的に資金を確保したい医療法人におすすめの手法です。
シンジケート・ローン
シンジケート・ローンとは、複数の金融機関から融資を受ける協調融資のことです。
アレンジャー(幹事金融機関)が複数の金融機関(シンジケート団)を取りまとめ、同一条件で1つの法人に対して融資を行います。
医療機関はアレンジャーに対して手数料(アレンジメント・フィー)を支払います。
複数の金融機関が少額ずつ融資をするため、金融機関にとってはリスクを抑えられる点がメリットです。
医療機関にとっては、複数の金融機関と交渉する手間を省けるメリットがあります。
しかし、シンジケート・ローンを利用するためには、詳細情報を記載した事業計画書を提出しなくてはいけません。
コミットメント・ライン
コミットメント・ラインとは、期限や融資上限額を設定した上で融資を受ける方法です。
医療法人は、期限内は融資上限額の範囲でいつでも自由に借入できます。
そのため、スピーディーに融資を受けたい際に最適です。
しかし、融資上限額全体に対して手数料が定められるため、実際に上限まで利用していない場合でも手数料が発生してしまいます。
MS法人
MS法人(メディカル・サービス法人)とは、医療機関でしかできない業務以外の関連業務を行う法人のことです。
医療法人はMS法人を窓口として資金調達することができます。
MS法人は株式会社なので株式や社債を発行できるだけでなく、営利事業によって利益を得ることも可能です。
しかし、医療法人の役員はMS法人の役員と兼任できない、税務否認リスクがあるなど、MS法人にはデメリットも存在します。
MS法人を設立するメリットとデメリットについては、以下の記事を参考にしてください。
関連記事:MS法人を設立するメリットとデメリットについて詳しく解説
医療法人における資金調達先
ここでは、医療法人における資金調達先を紹介します。
福祉医療機構
福祉医療機構は、独立行政法人です。
福祉の増進、医療の普及向上を目的として平成15年に設立されました。
医療法人が優先的に検討する資金調達先のひとつです。
医療業界に特化した行政法人であるため、担当者が業界に精通している点が特徴です。
公式サイトでは、福祉医療機構の融資の特徴として以下の項目が挙げられています。
- 「長期・固定・低利」の資金を安定的に供給
- 豊富な融資実績に基づき専門的な相談を実施
- 国の政策に応じた優遇融資のメニューを提供
- 融資実行後におけるきめ細やかなフォローアップ
参照:福祉医療機構「医療貸付事業」
日本政策金融公庫
日本政策金融公庫とは、平成20年に設立された政策金融機関で、前身は国民生活金融公庫・農林漁業金融公庫・中小企業金融公庫です。
日本政策金融公庫は全国に拠点があるため、スピーディーにやり取りできる点がメリットと言えます。
国民生活事業における事業拡大・生産性向上等を図る方向けの特別貸付は、7,200万円が上限です。
設備資金は20年、運転資金は7年以内となります。
参照:日本政策金融公庫「融資のご案内」
株式会社商工組合中央金庫(商工中金)
株式会社商工組合中央金庫(以下、商工中金)とは、中小企業に特化した金融機関です。
商工中金が行っている融資の形態は「組合貸」と「構成員貸」で、シンジケートローンやABL(アセット・ベースト・レンディング)、私募債受託、売掛債権流動化などのサービスも提供しています。
中小企業を対象にした融資の上限金額は3億円、金利は1.11%です。
ただし、商工中金が行っているのは中小企業への融資です。
医療法人が融資サービスを利用できるかは個別対応になる可能性が高いため、問い合わせしてみてください。
参照:商工中金「資金調達」
民間金融機関(保証協会)
民間金融機関とは、民間資本によって運営される金融機関のことです。
民間金融機関による融資は、信用保証協会を公的な保証人として設定した上で行われます。
信用保証協会の存在により、民間金融機関は融資によるリスクを軽減できるため、融資を受けやすい点が特徴です。
しかし、従業員300名以下などの条件が定められているので注意してください。
記事まとめ:医療法人についてのご相談は七福計画株式会社へお任せください
今回の記事では、医療法人における資金の扱いをはじめ、医療法人における資金調達の方法、資金調達先などについて解説しました。
医療法人は最低2ヶ月分の運転資金が必要になります。
株式会社と比較すると、資金調達方法には制限がありますが、医療法人もさまざまな方法で資金を集められます。
どのように資金を調達すべきかわからない方は、ぜひ七福計画株式会社にご相談ください。
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