
医療法人の経営改善が必要になる原因とは?戦略や事例を紹介!
「医療法人の経営改善が必要になケースとは?」
「病院経営で大切なこととは?」
と疑問をお持ちの方がいるかもしれません。
医療法人を安定的に経営していくためには、経営が悪化する原因や経営状況の調べ方、経営改善計画の立て方などを理解することが大切です。
今回の記事では、赤字医療法人の現状や医療法人の経営改善が必要になる原因、効果的な戦略、経営改善を実施する流れ、成功事例などについて解説します。
赤字の医療法人が増加している?
病院団体合同調査ワーキンググループが実施した調査(医業利益・経常利益の6年連続年度比較)によると、2023年度における赤字の医療法人割合は「83.3%」でした。
2021年度は「73.5%」でしたが、2022年度には「87.3%」に急増しています。
この結果から、赤字の医療法人は全体の大多数を占めており、近年は増加傾向にあると言えるでしょう。
参照:病院団体合同調査ワーキンググループ「2024 年度 病院経営定期調査 概要版 -最終報告(集計結果)-」
医療法人の経営改善が必要になる原因
それでは、どうして医療法人は経営改善が必要になるのでしょうか?
人件費の増加
人件費は法人の経営状況に大きな影響を及ぼします。
人件費が増加する要因として、最低賃金の引き上げや生産年齢人口の高齢化などが考えられるでしょう。
また、現在は多職種での医療が評価される傾向にあり、採用コストも増加傾向にあります。
病床稼働率の低下
病床稼働率とは、運用病床数に対する入院患者の割合を意味します。
保険診療の中でも入院収益による割合は大きいです。
そのため、人件費や設備投資などの固定費が多い医療法人の場合、病床稼働率の低下による影響を受けやすくなります。
外部環境の変化
医療法人の経営は外部環境による影響を受けます。
例えば、最近だと新型コロナウイルス感染拡大により、医療事業の収入に大きな影響がありました。
予定入院や手術の延期が行われたほか、患者の通院頻度の減少、パーテーション・マスク・消毒剤などの設置によるコスト増加などが関係しています。
政策による制限
国の政策により医療法人の経営が影響を受けているケースが見られます。
例えば、医療報酬の設定や制度などに関する政策です。
医療法人の経営改善に必要な戦略
それでは、医療法人の経営改善を行うためにはどのような戦略が必要なのでしょうか?
以下で、具体的な経営戦略を確認していきましょう。
コストマネジメント
経営改善に必要な戦略として「コストマネジメント」が挙げられます。
単純にコストを削減するだけではなく、広い視点からコストマネジメントに取り組むことが重要です。
具体的には、現状分析や人件費の見直し、資材の仕入れ単価の見直し、不採算科目の撤退、新規サービスの導入などの戦略が考えられるでしょう。
例えば、新規サービスの導入により生産性を向上させることで、結果的に人件費削減を実現できます。
生産性向上
医療法人が経営改善を目指す上で「生産性向上」も検討すべき項目のひとつです。
保険診療ではひとつひとつの医療行為における収益が決められているため、従業員の生産性を向上させることで収益拡大を目指せます。
従業員の生産性を向上させるためには、職場環境の整備や従業員のスキルアップなども重要になるでしょう。
人材不足が深刻化している現在、ICT化やAIなどの新技術を活用して、生産性向上を実現している医療法人も見受けられます。
組織マネジメント
医療法人の経営改善に必要な戦略に「組織マネジメント」も考えられます。
組織マネジメントとは、組織をスムーズに運営するための手法です。
具体的な組織マネジメントとして、リーダーシップの確立や組織の仕組みづくりなどが挙げられるでしょう。
医療法人が目指すべきビジョンやミッションを明確化した上で、従業員を導くリーダーシップの育成が求められます。
統合
医療法人が経営改善を実現するためには、「統合」も検討すべき戦略のひとつです。
赤字病院が黒字病院と統合することで、黒字化を目指すことができます。
しかし、統合による経営改善の効果は一時的です。
経営状況の変化により従業員のモチベーションが下がり、生産性が低下する恐れがあります。
さらに、これまで抱えていた患者は病院を変える必要があり、従業員だけでなく、患者にとっても影響が大きいと言えます。
医療法人のM&Aについては、以下の記事を参考にしてください。
関連記事:医療法人におけるM&Aとは?5つのスキームや事例を紹介します
患者満足度の向上
経営改善に必要な戦略として「患者満足度の向上」が考えられます。
患者満足度とは、医療機関のサービスを総合的に評価した指標のひとつです。
患者満足度を向上させることで信頼を獲得すれば、患者に安心してリピートしてもらえるようになるでしょう。
患者満足度を向上させるには、コミュニケーションの質の向上、相談窓口の設置、新設備の導入、プライバシー保護など、さまざまな取り組みが重要になります。
医療法人が経営改善を実施する流れ
それでは、実際に経営改善に取り組むには何から始めればいいのでしょうか?
以下で、実施までの流れを紹介します。
現状把握・調査
まずは現状把握・調査からスタートしましょう。
現状を把握できていないと、設定すべき課題は何か、何を優先的に改善すべきかが曖昧になってしまいます。
さらに現状把握は適切な目標設定を行う上でも重要です。
そのため、まずは経営状況を定量的(もしくは定性的)に調査してください。
医業分野の経営コンサルタントを活用して、客観的に調査を実施するのも良いでしょう。
外部のサポートを活用することで、内部で気づけなかった課題が見つかる可能性があります。
経営戦略の見直し
続いては、経営戦略の見直しを行います。
まず、現時点で自法人がどのような戦略に基づいて経営を行っているかを振り返ってください。
調査段階で設定した課題を解決するために、経営戦略をアップデートしていきましょう。
例えば、患者満足度に課題がある医療法人の場合、不満要因を明らかにした上で、従業員への教育体制整備など、具体的な戦略を立てていきます。
ビジョンの設定
経営戦略とあわせて、ビジョン(将来目指すべき姿)を設定しましょう。
ビジョンが定まっていると、従業員が目指すべき方向性が明らかになり、モチベーションの向上にも役立ちます。
ビジョンを考案する際は「誰もが質の高い医療を受けられるようにする」「地域に根付いたサービスを実現する」など、わかりやすい内容にすることが大切です。
施策の実施
目指すべき方向性が定まったら、いよいよ施策の実行です。
スケジュールや実施期間を決めて、施策を実施していきましょう。
施策を実行する前に数値的な目標を立てて、効果検証できるようにすることが大切です。
ここまで経営改善を実施する流れを紹介しましたが、自法人のみだけで対応するのは難しいという医療法人は外部のサポートを利用しましょう。
医療法人における経営改善の成功事例
ここでは、厚生労働省の資料を参考にしながら、医療法人における経営改善の成功事例を紹介します。
参照:厚生労働省「中小病院における経営改善事例について」
事例1:専門特化により差別化を実現
経営改善の1つ目の事例は、財団法人操風会における岡山旭東病院のケースです。
岡山市内には病院が数多くあり、中小規模である岡山旭東病院が総合病院として競争していくのは難しいと感じていました。
そこで脳神経疾患に特化する戦略を打ち出したと言います。
以来、脳神経・運動器疾患の総合専門病院としての地位を確立し、差別化を実現しています。
事例2:地域連携による経営の安定化
経営改善の2つ目の事例は、医療法人社団和乃会における小倉病院のケースです。
東京都世田谷区にある小倉病院は、以前まで厳しい経営状態だったと言います。
その要因の一つに地域の診療所との連携が限られている背景がありました。
そこで、年間60件程度にとどまっていた紹介件数を向上させることを目指しました。
他の病院とのネットワーク作りを行い、「世田谷区若手医師の会」等にも関わることで、紹介件数が大幅に向上したそうです。
記事まとめ:医療法人についてのご相談は七福計画株式会社へお任せください
今回の記事では、赤字医療法人の現状や医療法人の経営改善が必要になる原因、効果的な戦略、経営改善を実施する流れ、成功事例などについて解説しました。
近年は赤字医療法人の割合が大きく、多くの医療法人において経営改善の必要性が高まっています。
しかし、具体的にどのような施策を実施すべきかわからない方も少なくありません。
医療法人の経営でお困りの方は、ぜひ七福計画株式会社にご相談ください。
当社は経営や金融のプロとして、さまざまな法人様をサポートしてきました。
丁寧なカウンセリングで評価いただき、これまでの相談実績は3,000件以上におよびます。
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