MS法人を設立するメリットとデメリットについて詳しく解説

MS法人を設立するメリットとデメリットについて詳しく解説

「MS法人ってなに?」
「MS法人と医療法人の違いは?」
「MS法人を設立するメリットやデメリットは?」

という疑問をお持ちではありませんか?

そこで今回は、MS法人に関する基本的な定義からそのメリット・デメリットを紹介します。

さらに、設立までの具体的な手順まで解説していますので、MS法人の設立を検討している方は、ぜひ最後までお読みください。

目次

MS法人とは?

まずは、MS法人についての基礎的な定義や役割について紹介します。

MS法人の定義

MS法人の「MS」は、「Medical Service(医療サービス)」の頭文字をとったものです。

この法人形態は、直接的な医療行為を行わないものの、医療機関の運営に関連するサービスを提供する事業体を指します。

一般的なケースとして、医療行為を行う病院やクリニックは、法律で定められた医療法人として運営し、非医療行為(例えば、保険請求業務や会計業務など)は別途MS法人として設立し、そこで行うことがあります。

これにより、医療サービスと非医療サービスを法的に分離して運営することが可能になります。

MS法人・医療法人・株式会社の違い

MS法人と医療法人、株式会社とはどのような点が異なるのでしょうか?

MS法人と医療法人の違い

MS法人と医療法人の最大の違いは、営利目的であるかどうかという点です。

MS法人は、営利目的の法人として、医療法人の補助的な役割を担い、経営や診察の効率化に特化しています。

一方、医療法人は、営利目的で運営することができない法人で、医療行為に直接関わる業務を行います。

さらに、医療法人と認められるには、複数の条件を満たす必要があります。

例えば、社員が3名以上いること・1か所以上に病院、診療所、介護老人施設があること・医療行為に必要な設備、器具があることなどがあります。

MS法人と株式会社の違い

MS法人と株式会社の違いは、主に用途と設立目的にあります。

株式会社は営利を目的とし、一般的な事業活動を行う法人格です。

MS法人も営利を目的としていますが、医療法人の理事長の配偶者や近親者が経営することが多く、医療法人が行えない非診療業務を幅広く担当する法人です。

MS法人のメリット

MS法人には、どのようなメリットがあるのでしょうか。

今回は、5つのメリットを紹介します。

所得税を抑えることができる

開業医がMS法人を設立することで、個人と法人の所得を分けられ、所得税を抑えることができます。

具体的には、個人の所得税は累進課税となるため、所得が増加することで税金の負担も大きくなります。

しかし、MS法人と認められると、年課税所得金額が800万円以下は15%、800万円を超える部分は23.2%の税率が適用されるため、課税所得金額によっては税金の負担を軽減することに繋がります。

【個人医院の所得税】

課税される所得金額 税率 控除額
1,000千円以上 5% 0円
1,950,000円 から 3,299,000円まで 10% 97,500円
3,300,000円 から 6,949,000円まで 20% 427,500円
6,950,000円 から 8,999,000円まで 23% 636,000円
9,000,000円 から 17,999,000円まで 33% 1,536,000円
18,000,000円 から 39,999,000円まで 40% 2,796,000円
40,000,000円 以上 45% 4,796,000円

引用:No.2260 所得税の税率|国税庁

【MS法人の法人税】

課税される所得金額 税率
800万円以下の場合 15%
800万円を超える場合 23.2%

参考:No.5759 法人税の税率|国税庁

また、家族や親族を役員に就任することで、給与所得控除を活用することができ、さらに税金を抑えることができます。

診断と経営を分離することができる

先程紹介した通り、MS法人は、医療行為ではなく、医療機関の経営や事務を専門に行う機関です。

そのため、MS法人を設立することで、診断などの医療行為と経営を明確に分類することができます。

分離することで、医療法人が医療行為に専念することができるだけではなく、お金の流れが分かりやすくなり効率的な経営を実現することができます。

それぞれに特化した機関を設けることで、より専門性の高い人材を適所に配置できるメリットもあります。

相続対策ができる

医療法人の場合、後継者は必ず医師でなければいけません。

しかし、MS法人の場合は、医師免許をもっていない人でも相続することができるため、親族内に医師がいない場合でも相続することができ、よりスムーズに相続手続きを行うことができます。

資金調達を行うことができる

MS法人は医療法人とは異なり、利益を追求することができる機関であり、融資を受けることが可能となります。

非営利団体である医療法人だと、資金の調達方法に限りがあり、資金面に課題を抱えるケースもあります。

しかし、MS法人であれば、融資を受けることや社債を発行することができるため、資金調達の柔軟性が高まります。

さらに、MS法人が医療法人に貸し付けることもできるため、互いをサポートし合うことでより効率的な経営に繋がります。

医療法で規制されている事業を行うことができる

MS法人は、医療法人ではないため、医療法で制限されているような診療以外の事業を行うことができます。

例えば、専門機関が監修している化粧品の販売や福祉サービスの運営などの幅広い事業を展開することができます。

しかし、それぞれの事業において医療法とは別の法律や条例を満たさなければいけない可能性があるため、注意が必要です。

MS法人のデメリット

一方で、MS法人にはどのようなデメリットがあるのでしょうか。

今回は、5つを紹介します。

消費税が増加する可能性がある

先程、所得税を抑えることができる点をメリットとして挙げましたが、一方で、消費税が増加する可能性があります。

なぜなら、医療法人とMS法人間の取引に消費税がかかってしまうためです。

例えば、MS法人が所有する不動産を医療法人が借りる場合、家賃を支払うことになります。

その際に、MS法人に支払った家賃に消費税が課せられ、医療法人単体であれば発生しなかった追加の消費税を支払う必要が出てくるのです。

税金面では、リスクも抱えていることを含めて考慮しなければなりません。

医療法人の役員と兼務できない

現在すでに医療法人の役員をされている方が、MS法人の役員を兼務することはできません。

その理由は、医療法人の非営利性を担保するための医療法で定められているためです。

役員を兼務することで、医療法人の非営利性が失われる可能性があるため、MS法人は別の方を役員に任命する必要があります。

以前までは、兼務できてしまっている法人も存在していましたが、現在は規定が厳格化しているため、注意が必要です。

税務否認リスクがある

税務否認リスクとは、MS法人と医療法人間の取引が適正と認められず、税務局から取引自体を否認されてしまう可能性があることを意味します。

具体的には、取引に合理性や妥当性が見受けられず、税負担削減のための収入分散が目的であると判断されてしまうと否認されます。

特に、悪質な行為だと判断されると、高額の追加徴収が発生する可能性もあるため、十分な確認が必要不可欠です。

薬機法の知識が必須になる

MS法人は、医師免許がなくても代表になることはできますが、薬機法の知識は必要となります。

化粧品や健康食品などの商品の製造販売や医療機器の販売には、薬機法が大きく関わっているためです。

医療機関や薬局などでこれらの取引を行う場合には、薬機法に基づく規定などを遵守しなければなりません。

そのため、直接的な医療行為を行わないMS法人であっても、患者の健康や安全を保障するためにも薬機法の知識が必要です。

法人設立のコストがかかる

MS法人を設立するにも、時間とコストがかかります。

特に、コストは、登記薄謄本の取得や登記料などの設立のための諸事務において発生します。

さらに、設立後の運営・維持にもお金がかかります。

具体的には、運営のための人件費や保険料、事務費などが挙げられます。

法人設立前に、十分な資金を用意しておきましょう。

MS法人の設立手順

続いて、MS法人の設立手順について紹介します。

設立の手順は下記の通りです。

  • 必要事項を決定する
  • 法人印鑑を作成する
  • 定款の作成と認証を行う
  • 資本金の払い込みを行う
  • 必要書類を作成する
  • 法務局へ書類を提出する

それぞれ詳しく紹介します。

必要事項を決定する

まずは、MS法人を設立するための必要事項を決定します。

全ての項目を一度に決定するには時間がかかるため、事前に以下の最低限必要な項目は決めておくとスムーズに手続きを進めることができるでしょう。

項目名 意味
商号 会社の名前
本店所在地 法律上の会社の住所
資本金 事業を運営するために必要なお金(資本金1円以上から設立可能)
事業目的 法人設立の目的・他社が会社をチェックする際に必要となる
事業内容 事業の具体的な内容(どのような商品・サービスを販売するのか)
設立日 設立の登記申請をした日
会計年度 財務管理を行う期間のこと
役員/株主の構成 役員は誰を任命するか/誰がどれだけの株を保有するか

法人印鑑を作成する

法人を設立する際に、法務局に対して登記申請をするため、個人の印鑑とは別に法人印鑑が必要です。

必要となる印鑑は、会社実印です。

重要な契約を結ぶ際にも使用する印鑑となるため、偽装されることのないように作成しなければなりません。

また、実印を作成するタイミングで、銀行印や住所印も合わせて作成しておくと、再度作成する手間を省くことができるため、おすすめです。

定款の作成と認証を行う

定款とは、会社の憲法ともいわれる重要なもので、会社の事業目的や活動内容、組織形態などについて書かれた書類を指します。

定款に記載する内容は、以下の3つがあります。

  1. 絶対的記載事項(事業目的・商号・本社所在地・設立に際して出資される財産の価額またはその最低額・発起人の氏名または名称及び住所)
  2. 相対的記載事項
  3. 任意的記載事項

定款を作成して終わりではなく、役場で認証をしてもらう必要があります。

参考:法務省:株式会社の設立手続(発起設立)について

資本金の払い込みを行う

認証がされた後は、銀行口座に資本金の払い込みを行います。

定款に資本金の金額を明記するため、その金額に沿って正確に振り込みする必要があります。

この時点ではまだ会社名義の口座はないため、一度発起人の個人口座に振り込みます。

また、振り込みの証明書が必要になるタイミングがあるため、通帳の写しをコピーしておくと便利です。

必要書類を作成する

ここまで完了した後は、登記申請に必要な書類を作成します。

必要書類は以下のものがあります。

なお、必要となる書類は株式会社であるか合同会社であるかによって異なるため、注意してください。

【株式会社と合同会社それぞれに必要書類】

株式会社・合同会社に必要 定款、振り込み証明書、役員の就任承諾書、印鑑届出書
株式会社のみ必要 登記申請書、株主全員の印鑑証明書、発起人の決定書

書類に不備があると、トラブルの原因となるため必ず確認してください。

法務局へ書類を提出する

最後に、必要な書類と手続きが全て完了した後に、法務局へ書類を提出します。

不備がなければMS法人の設立は、2週間ほどで完了します。

しかし、不備があった場合には、修正が必要となるため、訂正印を持っていくことをおすすめします。

MS法人の活用事例

MS法人の活用事例について、事業分散の事例と相続対策の事例に分けてそれぞれ紹介します。

事業分散の事例

事業分散におけるMS法人の活用事例を紹介します。

医療行為に関わらない事業を分散させるために、家族や親族を代表に任命してMS法人を設立するケースは多くあります。

例えば、MS法人が不動産や医療機器、設備などを保有しており、医療法人に対してリースとして貸し出し、MS法人が利益を得るものがあります。

その場合、医療に直接関わらない事業を明確に分離することができるだけではなく、所得の分散にも繋がります。

相続対策の事例

医療法人の場合、後継者は医師である必要がありますが、MS法人では医師でない親族にも事業を承継させることが可能です。

具体的な事例として以下が挙げられます。

親族を役員に任命

MS法人の代表や役員に親族を任命することで、所得を分散し、相続税の負担を軽減することができます。

例えば、医療法人の理事長の配偶者や子供をMS法人の代表にすることで、所得税の累進課税を回避し、法人税率を適用することができます。

生前贈与

MS法人を通じて親族に給与や役員報酬、配当を支払うことで、生前贈与として財産を移転し、相続時の税負担を軽減することができます。

これにより、医療法人の経営者は資産を効率的に次世代に引き継ぐことが可能となり、相続税対策を効果的に行うことができます。

MS法人の設立には、事業分散によるリスク低減や相続対策といった多くのメリットがありますが、税務リスクや運営コストの増加などのデメリットも存在するため、専門家のアドバイスを受けながら慎重に進めることが重要です。

経営のお悩みは七福計画株式会社にご相談ください

七福計画株式会社は、医療法人やMS法人の課題解決にも強みを持っています。

お客様の会社の状況や課題をヒアリングし、理想とする法人の実現を丁寧にサポートしています。

累計相談件数3,000件を突破し、お客様ファーストを徹底してきたことで、高い評価を得ています。

また、七福計画株式会社は、弁護士やFP、税理士など幅広いネットワークを保有しているため、専門性の高い幅広い課題に対応しています。

気になる方は、ぜひお問い合わせください。

まとめ

今回は、MS法人の基本的な定義から設立のメリット・デメリット、具体的な設立手順まで紹介しました。

MS法人は、医療行為を行わない機関であり、医療法人とは異なる営利目的での運営が認められています。

税金の負担削減や相続対策、経営と診断の分離などのメリットがありますが、コストや税務否認リスクなどのデメリットもあります。

この記事を参考にし、ご自身の状況や目的に応じて設立するのが適切であるか、検討してみてください。

医療法人の節税に関するご相談はこちら

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