医療法人を設立するための要件と手続きの流れを解説

医療法人を設立するための要件と手続きの流れを解説

医療法人を設立するには、どのような条件や準備があるのでしょうか。

この記事では、医療法人設立の要件をそれぞれの観点に関して詳しく解説するとともに、具体的な流れを紹介します。

さらに、気になる方が多い開業医・株式会社との違いについても徹底解説しています。医療法人の設立を検討されている方は、ぜひ最後までお読みください。

目次

医療法人設立の要件

まず初めに、医療法人を設立する際の要件について紹介します。

医療法人を設立するには、以下の4つの要件を満たす必要があります。

人的要因 3名以上の社員、3名以上の理事(理事長を含む)、1名以上の監事を配置する 等
施設・設備要件 1か所以上の病院・診療所・介護老人保健施設があり、医療行為に必要な設備・器具を確保していること
資産要件 設立後2ヶ月分の運転資金が現預金で確保されていること(個人時代の設備を買い取る場合はその資金も別途必要)
その他の要件 既存の法人と同じ法人名や誇大広告に該当する法人名を使用しないこと 等

それぞれについて1つずつ解説します。

人的要件

人的要件には、医療法人の設立と運営のために必要な役員と職員の構成が含まれています。

具体的には、以下の6つの条件があります。

  1. 社員は、3名以上が必要
  2. 理事長を含む役員は、3名+監事1名が最低条件
  3. 役員欠格事由に該当しないものでなければならない
  4. 理事長は、医師または歯科医師でなければならない
  5. 法人の理事就任予定者や医療機関の職員は監事に就任できない
  6. 医療機関の管理者は、必ず理事に加えなければならない

また、社員は社員総会における議決権を一人一票ずつ保有している・理事の任期は2年を超えることはできないが再任は可能などの内容も含まれています。

施設・設備要件

施設や設備に関する要件は、主に2つとなっています。

  1. 少なくとも1か所以上の病院・診療所・介護老人保健施設の設置
  2. 医療行為に必要な設・器具の確保

①に関しては、図面や賃貸契約書などによって1か所以上の医業施設を保有していることを証明しなければなりません。建設中であっても認可の日までに完成することを証明する必要があります。

②に関しては、法人設立前の個人事業時代の医療設備は、原則として拠出するように定められています。特別な事情から拠出できない場合には、法人設立後に買い取るなどの対応策を審査担当者に提示する必要があります。

資産要件

資産に関する要件も主に2つとなっています。

  1. 設立後2か月分の運転資金が現預金で確保されていなければならない
  2. 個人時代の設備の買い取りを行う場合は、その資金も別途必要

医療法人は、設立して完了ではなく、設立後に法人として運営していかなければなりません。

そのため、設立時に余裕をもった資産を準備しておくことで、運営がうまくいかなかった場合でも法人を維持することができます。

さらに、先程紹介した通り、個人時代の医療設備は、法人設立後に買い取ることも可能なため、その場合にはさらに別途資金を用意しておきましょう。

その他の要件

先程紹介した3つの観点以外の要件をまとめて紹介します。

  1. 既存の法人と同じ法人名、誇大広告に該当する法人名は使用不可
  2. 個人事業での開業実績がない場合でも法人化は可能
  3. 2つ以上の医療施設を保有する形での法人化は可能。ただしそれぞれの医療施設の管理者が、事実上の雇用関係にある場合などは不可

③に関しては、預金通帳や賃貸借契約書などを用いて判断されます。

法人設立の手続きの流れ

続いて、医療法人を設立するための具体的な手続きの流れについて詳しく見ていきましょう。

なお医療法人の設立手順は自治体によって異なる場合もあるため、一般的な例として参考にしてみてください。

手順1.医療法人設立説明会への参加

医療法人を設立する場合は、自治体が開催する医療法人設立説明会への参加が必要です。

開催は年2回となっている自治体が多いので、参加のタイミングを逃さないようにしましょう。

手順2.定款の作成

医療法人を設立する際に必要となるのが、医療法人の定款(案)の作成です。

定款に記載するべき項目と主な規定事項は以下の通りです。

  • 名称および事務所の所在地
  • 目的および事業
  • 開設する病院・診療所・施設の名称と所在地
  • 資産および会計に関する規定
  • 社員および社員総会に関わる規定
  • 役員および理事会に関する規定
  • 定款の変更に関する規定
  • 解散、合併および分割に関する規定

定款の作成例については、厚生労働省が公開しているものを参考にしてみてください。

参考: 社団医療法人の定款例|厚生労働省

手順3.設立総会の開催

医療法人の定款を定めた後、設立者3名以上による設立総会を開催し、以下の内容をまとめた議事録を作成する必要があります。

  • 設立総会が開催された日時・場所
  • 設立総会に出席した発起人又は設立当時の役員の氏名または名称
  • 設立総会の議長の氏名
  • 設立総会の議事案とそれぞれの結果
  • 議事録の作成に係る職務を行った発起人の氏名または名称

手順4.設立認可申請書の提出・審査

設立総会の後に行うのが設立認可申請書の作成と提出です。

設立認可申請には仮申請と本申請があり、仮申請後の審査に通らないと本申請に進むことができません。

審査には保健所等の関係機関への照会や面接等が含まれ、審査通過後は知事からの詰問および都道府県の医療審議会による審議も行われます。

手順5.設立認可書の交付

設立認可申請書の審査および医療審議会による審議を通過すると、設立認可書が交付されます。

この交付を受けた段階で、医療法人の設立に対する認可が出たと考えて良いでしょう。

手順6.設立登記申請書類の作成・申請

設立認可書が交付されたら、その後2週間以内に設立登記申請書類を作成しましょう。

登記の際に必要となる情報は以下の通りです。

  • 名称
  • 事務所の所在場所
  • 登記の事由
  • 認可書到達の年月日
  • 目的および業務
  • 役員に関する事項
  • 理事長の氏名・住所
  • 資産の総額
  • 解散の事由

参照: 医療法人設立登記申請書|法務局

手順7.登記完了(設立)

登記申請書類を提出したところで、医療法人の設立が完了となります。

その後は銀行口座等の名義変更やライフラインの契約、また保健所や厚生局、税務署等で必要な各種手続きを進めていきましょう。

必要な手続きが全て完了すると、医療法人として病院・クリニックを経営することができるようになります。

法人化するうえで加入を検討すべき保険とは

医療法人として病院・クリニックを経営する場合は、万が一に備えて法人保険に加入するのが一般的です。

ここからは、医療法人の設立と合わせて検討したい法人保険の特徴と加入メリット、また選び方のポイントについて詳しく見ていきましょう。

法人保険に加入するメリット

医療法人が法人保険に加入するメリットには以下のような点が挙げられます。

  • 保険料の一部または全部を経費として計上できる
  • 経営のリスク(就労不能、災害、事業失敗、医療事故等)に備えられる
  • 法人保険で積み立てた資金を用いて退職金を支給することができる 等

法人保険を選ぶ際のポイント

法人保険に加入する際は、その目的を明確にしたうえでプランを設計していくことが大切です。

経営者・役員の死亡保障 経営者に万が一のことがあった場合に備えるのが目的です。一般的には保険料を抑えた掛け捨て型の定期保険が採用されています。
社員が死亡した際の弔慰金 社員に万が一のことがあった場合の弔慰金に備えるのが目的です。退職金の準備を兼ねた養老保険等が選ばれています。
役員・社員の退職金準備 役員の退職金準備については、経営者保険と呼ばれる保険がおすすめです。経営者保険の中には保険料の一部または全部を損金算入できるものもあります。

医療法人にしない理由はある?医療法人を設立するメリットとデメリットを解説

続いて、医療法人を設立するメリットとデメリットについて解説します。

メリット

医療法人化することのメリットは、資金面と事業面それぞれにあります。

まず資金面では、医療法人化することで、在籍する医師への報酬は法人からの給与というかたちになります。それにより、給与所得控除の対象となるため、控除を受けることができます。

また、家族や親族を役員にすることで、彼らに対しても役員報酬という形で渡すことができ、給与所得控除を受けることができます。

事業面では、複数のクリニックや医療系の事業所の経営が可能となります。そのため、事業をさらに広く展開していきたい方には、最適といえます。

さらに、法人化するための審査に通過したとして、社会的信用度が高まる点も大きなメリットといえるでしょう。

デメリット

反対にデメリットもあります。具体的には、設立に関する手続きの煩雑さや経営管理の複雑化、社会保険への加入が義務になるなどです。

医療法人の設立は、必要事項の検討や書類作成を避けては通れません。

さらに、法人を維持していくためには、適切な管理が必要不可欠です。

これらの業務が追加されることから、あえて法人化しない医師も存在しています。保険加入の義務化については、保険料が追加で差し引かれるため、費用が増加してしまいます。

絶対的な正解はないため、自分自身の状況や理想と比較して検討してみてください。

医療法人と開業医、医療法人と株式会社との違いについて

最後に、医療法人と開業医、株式会社との違いについて具体的に紹介します。

開業医との違い

開業医と医療法人は、大まかにいうとそれぞれが個人事業主と一般的な企業にあたるイメージです。

開業医が所有できる施設数は1か所、かつ開業できるのは病院あるいは診療所に限定されています。

しかし、医療法人は、先程紹介した通り分院が可能であったり、診療所・病院以外にも介護老人保健施設などを開業することもできます。

また、開業医の場合は、特別な登記は必要ないため、事務作業の負担は少ないといえます。

株式会社との違い

それでは、同じ団体である株式会社との違いはどこにあるのでしょうか。

医療法人は、株主への配当が禁止されていることから非営利団体ですが、株式会社は、株主への配当がある営利団体である点が異なります。

つまり、利益を追求するかどうかの違いです。他の違いとしては、議決権や業務の規定に関してです。

株式会社は、1株に対して1議決権があるのに対して、医療法人は、出資持分に関わらず1社員に対して1議決権があります。

記事まとめ|医療法人の経営なら七福計画株式会社にお任せください

  • 医療法人を設立することで、節税効果や事業拡大等のメリットを期待できる
  • 医療法人を設立するには、自治体の定めるスケジュールに合わせて必要な手続きを行う必要がある
  • 医療法人を設立する際は、万が一に備えるための法人保険についても加入を検討するのがおすすめ

当メディアを運営する七福計画株式会社では、法人保険を活用したリスクマネジメントや財務体質強化等のサポートを実施しています。

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