
医療法人の法人税は非課税になる?税制優遇制度などを徹底解説!
「医療法人の法人税は非課税になる?」
「医療法人には税制優遇が認められている?」
と疑問をお持ちの方がいるかもしれません。
一定の要件を満たしている医療法人は、一部の税金が非課税になる可能性があります。
しかし、医療法人が納める税金にはさまざまな種類があり、困惑している方も少なくありません。
そこで今回の記事では、医療法人の法人税が非課税になるケースや、非課税になる税金の種類、医療法人の税金に関するよくある質問について解説します。
医療法人の法人税は非課税になる?
基本的に医療法人には「法人税」が課せられています。
法人税とは、法人が事業活動で得た所得に課税される国税のことです。
法人税では「比例税率」が採用されており、所得に応じた税率が定められています。
一定の要件を満たしている場合は非課税
以下の要件を満たしている医療法人の場合、法人税が非課税になることがあります。
- 一般社団法人(非営利型法人)のうち、オープン病院事業を行う医師会や歯科医師会で一定の要件を満たしている場合。
- 公益法人等のうち、無料低額な診療を実施する病院事業を行う法人で一定の要件を満たしている場合。
法人税以外にも非課税となる税金があるので、以下で確認していきましょう。
参照:厚生労働省「医療保健業を行う公益法人等に対する法人税法上の非課税措置に係る証明について」
【国税】非課税になる税金の種類
国税とは、国庫に納付する税金のことです。
医療法人に関連する国税には、主に以下のものが挙げられます。
- 所得税
- 法人税
以下で、それぞれの国税が非課税になるケース(もしくは非課税にならないケース)を確認していきましょう。
所得税
所得税とは、個人の所得に対して課せられる税金のことです。
清算所得税・みなし配当課税・譲渡所得課税
医療法人は清算所得税・みなし配当課税・譲渡所得課税を課税しなくてはいけません。
しかし、特別医療法人・特定医療法人は非課税となる可能性があります。
個人の寄付に係る所得控除
個人が特定寄附金を支出した場合、所得金額からその分を差し引く(所得控除)ことが可能です。
しかし、医療法人・特別医療法人・特定医療法人に関しては、所得控除が認められていません。
参照:国税庁「寄附金を支出したとき」
法人税
法人税とは、法人が得た所得に対して課せられる税金のことです。
企業の寄附に係る損金算入
法人が寄附金を支出した場合、限度額内で損金算入することが認められています(一定額を超える部分に関しては、損金算入することができません)。
寄附金の支出先の区分に応じて、損金算入限度額が異なるため注意が必要です。
寄附金の支出先例として、以下を参考にしてください。
- 一般の寄附金
- 完全支配関係がある他の法人に対する寄附金
- 国または地方公共団体に対する寄附金
- 指定寄附金
- 特定公益増進法人に対する寄附金
- 国外関連者に対する寄附金
- 特定公益信託に対する支出金
医療保健業
医療保健業を行う際に発生する法人税については、医療法人および特別医療法人に対して「30%」の課税が義務付けられています。
特定医療法人に関しては、課税率が「22%(800万円以下の場合は18%)」と定められています。
収益事業
医療法人が収益事業を行うことは認められていません。
医療法人に認められている業務は、以下の通りです。
- 本来業務:医療法人の中心的な業務
- 附帯業務:保健衛生、医療関係者の養成、医学・歯学関連の研究所設置などの業務
- 付随業務:患者・従業員用の駐車場経営、院内に設置する売店経営などの業務
認定を受けた社会医療法人を除き、基本的には医療法人は収益事業を行えないため、収益事業に関わる税金も発生しません。
【地方税】非課税になる税金の種類
地方税とは、地方団体が地域の行政サービスを提供するために必要な資金を賄うための税金のことです。
医療法人に関連する主な地方税として、以下のものが挙げられます。
- 法人事業税
- 不動産取得税
- 固定資産税・都市計画税
- 道府県民税
- 市町村民税
法人事業税
法人事業税とは、法人が事業を行うために必要な行政サービスを維持するために徴収される税金のことです。
社会保険診療に係る収入
社会保険診療による収入に関しては、医療法人、特別医療法人、特定医療法人のいずれも課税をする必要がありません(患者からの消費税も非課税となります)。
ただし、以下のような保険適用外の自費診療は課税対象となっているので注意が必要です。
- 美容整形
- 歯列矯正
- 自然分娩
- 避妊手術・人工妊娠中絶
- 健康診断のオプション
- 保健医療機関以外での治療など
社会保険診療以外の収益事業
社会保険診療以外の収益事業に関しては、収入額によって税率が異なります。
医療法人の種類 | 400万円以下 | 400万円超 |
---|---|---|
医療法人 | 5% | 6.6% |
特別医療法人 | 5% | 6.6% |
特定医療法人 | 5% | 6.6% |
なお、社会保険診療以外の収益事業の例として、以下が挙げられます。
- 労災保険収入・自賠責保険収入
- 自由診療による収入
- コンタクトレンズや歯ブラシなどの物販
- 医療機器や自動車などの売却
- 歯科の撤去冠の売却
- 各種補助金
不動産取得税
不動産取得税とは、土地や家屋などの不動産を取得した際に発生する税金のことです。
購入、贈与、家屋の建築など、取得方法にはさまざまな種類があります。
医療の用に供する不動産
病院やクリニックなどを運営するために使う不動産に関しては、医療法人、特別医療法人、特定医療法人のいずれも不動産取得税を納める必要があります。
不動産取得税の税率は「4%」です。
医療関係者の養成所において直接教育の用に供する不動産
医療関係者の養成所として直接教育を行う際に使う不動産に関しては、医療法人と特別医療法人は不動産取得税を納めなくてはいけません。
不動産取得税の税率は「4%」です。
なお、特定医療法人の場合は非課税となっているので注意してください。
固定資産税・都市計画税
固定資産税とは、固定資産の所有者が納める税金のことです。
都市計画税は、市街化区域内に土地や建物を所有している者が納める税金を指します。
医療の用に供する不動産
医療事業を行う不動産については、医療法人、特別医療法人、特定医療法人のいずれも固定資産税・都市計画税を納税しなくてはいけません。
それぞれの税率は以下の通りです。
固定資産税 | 1.4% |
---|---|
都市計画税 | 0.3% |
医療関係者の養成所において直接教育の用に供する不動産
医療関係者の養成所として直接教育を行う際に使う不動産については、医療法人、特別医療法人は課税する必要があります。
特定医療法人は課税する必要がありません。
税率については、「医療の用に供する不動産」と同じ税率となります。
固定資産税 | 1.4% |
---|---|
都市計画税 | 0.3% |
道府県民税
道府県民税とは、地方税法に基づき、事務所等がある道府県が課す税金のことです。
医療法人、特別医療法人、特定医療法人のいずれも納税する必要があります。
道府県民税は、「均等割」と「法人税割」の2つの税割で構成されています。
それぞれの税率は以下の通りです。
法人税割の税率 | 法人税の5% |
---|---|
均等割額(資本金額) | 2万~80万円 |
市町村民税
市町村民税とは、地方税法に基づき徴収される、行政サービスに必要な経費を賄うための税金のことです。
医療法人、特別医療法人、特定医療法人のいずれも市町村民税を納めなくてはいけません。
道府県民税と同様、市町村民税は「均等割」と「法人税割」の2つの税割で構成されています。
法人税割の税率 | 法人税の12.3% |
---|---|
均等割額(資本金額及び従業者数) | 5万~300万円 |
医療法人の税金に関するよくある質問
ここでは、医療法人の税金に関するよくある質問に回答します。
医療法人における法人税の計算方法とは?
法人税の計算方法は「法人税」=「課税所得」×「税率」です。
税率は資本や年間所得によって変わってきます。
医療法人の法人税率は以下の通りです。
資本が1億円以下の医療法人 | 年間所得800万円以下の部分:19% 年間所得800万円超の部分:23.2% |
---|---|
資本金1億円超の医療法人 | 23.2% |
特定医療法人 | 19% |
医療法人における法人税の税率については、以下の記事を参考にしてください。
関連記事:医療法人の法人税の税率は?普通法人との違いなどについて詳しく解説
医療法人は税制優遇を受けられる?
医療法人のうち「社会医療法人」や「特定医療法人」などは、税制優遇を受けられる可能性があります。
例えば、都道府県知事の認定を受けた社会医療法人のケースです。
病院・診療所・介護老人保健施設から生じる所得に対する「法人税」や、直接救急医療等確保事業に関連する「固定資産税・都市計画税」は非課税になります。
国税庁長官の承認を得た特定医療法人に関しても、法人税の軽減税率が適用されます。
参照:厚生労働省「医療法人の基礎知識」
記事まとめ:医療法人についてのご相談は七福計画株式会社へお任せください
今回の記事では、医療法人の法人税が非課税になるケースや、非課税になる税金の種類、医療法人の税金に関するよくある質問について解説しました。
医療法人の税金は、法人の種類や税金の種類によって非課税となる項目が存在します。
しかし、税金にはさまざまな種類があるだけでなく、税金によって税率やルールが異なります。
税金に関する専門知識が不足している医療法人は、七福計画株式会社にご相談ください。
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