
連帯保証人制度とは?契約無効などの医療法人必見の変更点も解説!
連帯保証契約は、医療法人で働く人、さらには患者にとって理解を深めておきたいところだと思います。
この契約を軽視すると、後々のトラブルに発展する可能性があります。
特に2020年の民法改正以降、従来の契約書や運用方法では対応できないリスクが増えています。
本記事では、改正民法に基づく連帯保証人制度の変更点や実務で押さえるべき注意点を解説します。
医療法人の連帯保証人制度で契約が無効になるケースは?
2020年の民法改正によって、医療法人が患者と連帯保証契約を結ぶ際に契約が無効となるポイントが生まれました。
具体的にどのようなケースで無効になるのかを解説します。
責任限度額を設定していない契約は無効
改正民法では、個人が連帯保証人となる場合、必ず「いくらまで支払うか」という上限額(極度額)を契約書に明記しなければなりません。
これを定めていない契約は無効となり、医療機関は連帯保証人に請求できなくなります。
従来は極度額の定めがなくても契約が有効でしたが、改正後は患者の家族など個人が保証人となる場合、必須の条件となりました。
参考:兵庫県
具体的な限度額の決め方
限度額の設定は、医療費の見込みや過去の実績、患者の治療内容などを参考にして、現実的な金額を決めるのが一般的です。
たとえば、長期入院が予想される場合は、月額医療費に入院期間を掛け合わせて算出します。
契約書には「極度額○○万円」と明記し、連帯保証人が負う責任範囲を明確に示す必要があります。
極度額の設定は、保証人となる人の経済状況も考慮し、無理のない範囲で決めることが望ましいでしょう。
医療機関としても過大な極度額を設定するとトラブルの原因となるため、慎重な判断が求められます。
民法改正での連帯保証人制度の各変更点
2020年の民法改正では、医療法人が連帯保証契約を結ぶ際は、情報提供義務など新しいルールに対応する必要があります。
主債務者(患者)や債権者(医療機関)が果たすべき義務を理解し、契約書を適切に整備することが大切です。
主債務者(患者)から連帯保証人への情報提供義務
主債務者である患者は、連帯保証人となる人に対し、自身の財産状況や収支、他に負っている債務の有無などを事前に書面で説明する義務があります。
この情報が不十分なまま契約した場合、連帯保証人は契約を取り消せるため、医療機関側も患者が適切に情報提供した証拠を残す必要があります。
患者が情報を隠していた場合、後から保証人が契約の無効を主張できるため、医療機関としても事前確認が必要です。
債権者(医療機関)から連帯保証人への情報提供義務
医療機関にも連帯保証人から問い合わせがあった場合の説明や患者が支払いを遅延して「期限の利益」を失った際に2ヶ月以内に通知する義務が課せられました。
これらを怠ると、医療機関は連帯保証人に請求できなくなる場合があるため、対応マニュアルや記録の整備が求められます。
特に連帯保証人が自ら情報提供を求めた場合には、速やかに対応しなければなりません。
情報提供の記録を残すことで、後日の紛争を防ぐ効果も期待できます。
連帯保証人とは?
連帯保証人は、患者が医療費を支払えなくなった場合に、医療機関に対して患者と同じように支払い義務を負う人です。
一般的な保証人よりも強い責任が生じるため、契約内容やリスクを十分に理解しておく必要があります。
ここでは、保証契約の種類や保証人との違い、連帯保証人になれる人について解説します。
保証契約と根保証契約
保証契約は、特定の債務に対して保証人が責任を負う契約です。
一方、根保証契約は、一定期間内に発生する複数の債務をまとめて保証する契約で、医療費のような継続的な支払いに多く使われます。
根保証契約の場合も個人が保証人となるときは極度額を明記しなければ無効です。
医療機関では、患者の入院や治療が長期化するケースも多いため、根保証契約を選ぶことが一般的です。
極度額の設定や契約内容の明確化が、双方の信頼関係を築くうえで重要となります。
参考:法務省(P4)
連帯保証人と保証人の違い
保証人は、まず主債務者(患者)に請求が行われ、それでも支払いがない場合に初めて責任を負います。
一方、連帯保証人は、患者と同じ立場で、医療機関から直接請求を受けたらすぐに支払い義務が発生します。
このため、連帯保証人の責任は非常に重くなります。
保証人と連帯保証人の違いを理解せずに契約すると思わぬトラブルにつながるため、契約時には十分な説明が必要です。
催告の抗弁権
保証人には「先に主債務者に請求してほしい」と主張できる権利(催告の抗弁権)がありますが、連帯保証人にはありません。
医療機関は、連帯保証人に対していきなり請求できるため、保証人よりも責任が重くなります。
検索の抗弁権
保証人は「主債務者に財産があるなら、まずそちらから回収してほしい」と主張できます。
しかし、連帯保証人にはこの権利も認められていません。
つまり、患者に財産があっても、医療機関は連帯保証人に直接請求できます。
分別の利益
保証人が複数いる場合、通常は人数で責任を分け合います。
連帯保証人にはこの利益がなく、全額の支払い義務を負います。
複数の連帯保証人がいても、医療機関は誰か一人に全額請求できます。
連帯保証人になれる方、なれない方
連帯保証人になれるのは、原則として成人で判断能力がある個人です。
未成年者や判断能力が不十分な人は適しません。近年は、家族や親族以外にも、保証会社が連帯保証人となるケースも増えています。
ただし、法人が保証人になる場合は極度額の定めが不要です。
連帯保証人に選ばれた場合は、契約内容や責任範囲をしっかり確認し、安易に引き受けないよう注意が必要です。
その他の変更点
2020年の民法改正では、連帯保証人制度以外にも医療法人に関係する変更がありました。
特に医療費未払金の時効や医療過誤の損害賠償請求権の時効が見直されています。
これらの変更を理解し、適切に対応することが医療法人のリスク管理に直結します。
未払金の時効の変更
従来、医療費の未払いについては3年で時効となっていましたが、改正後は5年に延長されました。
その結果、医療機関は未収金の請求期間が長くなり、回収のチャンスが広がります。
ただし、時効の起算点は「権利を行使できることを知った時」からとなり、実務上も確認が必要です。
医療法人としては未収金の管理体制を強化し、時効を迎える前に請求や督促を行うことがポイントです。
参考:日本労働組合連合会
医療過誤の損害賠償請求権の時効の見直し
医療過誤による損害賠償請求権の時効も見直されました。
債務不履行に基づく場合は「権利を行使できることを知った時から5年」、不法行為に基づく場合は「損害および加害者を知った時から5年」となり、いずれも20年の除斥期間が設けられています。
そのため、患者側・医療機関側双方にとって、請求や防御の期間が明確になりました。
医療現場では、診療記録や説明内容の保存期間も見直す必要があります。
保証人制度の民法改正でとるべき行動
民法改正により、医療法人が連帯保証契約を扱う際には、契約手続きや書類の見直しが不可欠です。
新しいルールに沿った運用を徹底し、トラブルを未然に防ぐ体制づくりが求められます。
医療法人の現場では、契約書の内容や説明方法をアップデートし、関係者全員が改正内容を理解できるようにすることが重要です。
契約締結時の手順の見直し
契約締結時には、連帯保証人となる人が内容を十分に理解し、極度額や情報提供義務など新しいルールを守ることが大切です。
そのため、説明責任を果たし、書面での確認を徹底しましょう。
契約前の説明会や、パンフレット配布なども有効な手段です。
契約書を改正内容に適したものに書き換え
契約書には、責任限度額の明記や情報提供義務の内容を盛り込む必要があります。
古い書式を使い続けると契約が無効になるリスクがあるため、速やかに改定しましょう。
契約書のひな型は、法務部門や専門家の監修を受けて更新することが推奨されます。
情報提供の有無の記録
主債務者や医療機関が連帯保証人に情報提供した内容を、書面や記録で残すことが重要です。
これは後々のトラブル防止や契約の有効性担保につながるからです。
説明内容や提供日時、連帯保証人の同意サインなどを記録し、保管しておくと安心です。
消滅時効期間の変更
先述のとおり、医療費未払いの時効が5年に延長されたため、請求管理や記録の保存期間も見直しましょう。
時効管理を徹底することで、未収金の回収漏れを防げます。
電子カルテや会計システムでの管理体制強化も有効です。
時効の起算点や中断事由についてもスタッフ全員が理解しておくと、より確実な運用が可能です。
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本記事では、医療法人が連帯保証契約を結ぶ際に注意すべき民法改正のポイントや、契約が無効になるケース、実務での対応策についてご紹介しました。
責任限度額の設定や情報提供義務の徹底など、契約書や運用体制の見直しが不可欠です。
法改正を正しく理解し、現場でのトラブルを未然に防ぐことが、医療法人の信頼と安定した経営につながります。
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