医療法人の理事長の年収は?医療法人の理事長について詳しく解説
医療法人の理事長の平均年収は、いくらなのでしょうか。
医療法人の代表である理事長ですが、その詳細について理解している人は少ないでしょう。
今回は、理事長の基本的な情報から年収相場、個人医院と医療法人の比較まで徹底解説しています。
医療法人の設立を検討している方や理事長について知りたい方は、ぜひ最後までお読みください。
医療法人の理事長とは
まずは、医療法人の理事長について紹介します。
理事長になるための要件
医療法人の理事長は、株式会社でいう代表取締役社長にあたる役員です。
代表取締役社長は、株主総会で任命されればどなたでも就任することができます。
しかし、医療法人の理事長には、医療法によって要件が定められています。
具体的には、原則医師あるいは歯科医師でなければ、理事長になることはできません。
しかし、医療法第46条の6第1項のただし書きの規定が認められれば、医師・歯科医師でなくても就任することはできますが、審査基準は厳しくなっています。
理事長の主な業務内容
理事長の主な業務は、医療法人の代表として医療法人にかかわる全ての行為の決定をすることです。
一般財団法人では、形式上の名誉職として理事を選定する場合もありますが、医療法人の理事長は、あらゆる行為の最終決定と過失が発生した場合には、責任をとる必要があります。
理事長と院長の違い
理事長が医療法人の代表だと紹介しましたが、院長とはどのような違いがあるのでしょうか。
最も大きな違いは、責任をとる業務の範囲です。
医療法人の理事長は、医療法人全体の代表として、法律的な部分の責任者となります。
一方で、院長は、病院や診療所、クリニックなどの代表として、医療実務部分の責任者となります。
現場で発生する直接的な医療行為に関しては、理事長ではなく院長が責任を負います。
医療法人の理事長の年収の相場
厚生労働省が発表している「令和5年賃金構造基本統計調査」によると、医師の平均年収は、「14,670,180円」です。
同様の調査によると2019年は、約1,169万円だったため、増加していることがわかります。
日本の給与所得者における平均年収が、2022年で458万円であるため、平均よりも大幅に高い金額となっています。
その中で、理事長の正確な年収相場は公開されていませんが、役員報酬の相場である1,200万円くらいだという一説もあります。
非営利団体として民間機関と比較して高額な金額に設定することは不適切とされていますが、医療法人全体の代表であることや責任の大きさからそれ相応の年収を受け取ることはできるでしょう。
参考:令和5年賃金構造基本統計調査 結果の概況|厚生労働省
参考:第23回医療経済実態調査の報告(令和3年実施)|厚生労働省
理事長の年収を決める方法
先程紹介した年収は、経営面と個人の生活面両方をみてバランスを保つように決められます。
具体的なステップとしては、以下の3つのステップがあります。
- 理事長個人の家計に必要な金額を理事長報酬として決定
- 理事長報酬を支払った後に、医療法人全体の財務計算をし利益を算出
- 上記で算出した利益が医療法人を運営していくのに十分以上であるか判断
万が一、算出された利益では医療法人を運営・維持していくことが難しいとされた場合には、役員報酬の減額を検討する必要が生じます。
理事長の報酬を損金算入する条件
まず、損金算入の背景について解説します。
先程紹介した通り、役員報酬によって医療法人全体の利益をコントロールすることができ、法人税の負担軽減に繋げることができます。
しかし、これらの行為が意図的に行われることを防ぐために損金算入には制限が設けられています。
役員報酬を損金算入するための条件は、以下2つのいずれかを満たす必要があります。
定期同額給与
定期同額給与とは、年度内での増減関係なく、毎月一定の同額を支払い続ける形態を意味します。
事業年度内に定期給与の額が変更されたり、経営状況が悪化したことによる減額があったりしても、損金算入は認められます。
しかし、頻繁に変更することはできないため、注意してください。
事前確定届出給与
事前確定届出給与では、その名の通り、役員報酬の金額や支払い時期を予め税務署に届け出ることで損金算入が可能です。
毎月支払うのではなく、年に数回だけ支払うケースにも対応することができます。
しかし、経営状況が悪化した場合であっても、事前に申請した金額を支払わなければならないことから、事前確定届出給与を用いている法人は多くありません。
損金算入するときの注意点
続いて、損金算入するときの注意点を3つ紹介します。
報酬が高額な場合は損金算入ができない
上記の条件を満たしていても報酬が不相当に高額な場合は、損金算入はできません。
損金算入が可能かどうかは、その役員の業務内容や収益状況などをみて総合的に判断されます。
特別な業務に従事していないにも関わらず、高額な報酬を受け取っていると、不当だと判断される可能性が高いといわれています。
役員報酬の妥当性を説明できる資料を残す
役員報酬が税負担軽減目的になっていると判断されたり、妥当性を証明できなかったりした場合には、損金算入が認められません。
そのため、正当な役員報酬であると説明できる資料や証明は必ず保管をしておきましょう。
金額の決定事項だけではなく、決められるまでの過程や具体的な計算方法なども残しておくと万が一の場合に妥当性の証明となります。
親族を従業員とする場合においても、給与が高額であると損金算入ができない
医療法人では、親族を役員や従業員に配置することができ、医療法人からの給与というかたちで報酬を支払います。
しかし、親族であっても業務内容に金額が見合っていないほど高額であれば、不当とされて損金算入ができない場合があります。
個人医院と医療法人の比較
個人医院と医療法人について、税制と収入構造について比較します。
税制面での違い
開業医が運営する個人医院と医療法人間の税制面での違いは、納める税金の種類とその税率にあります。
個人医院は、個人事業主扱いとなるため「所得税」を、医療法人は「法人税」を納める義務が生じます。
所得税は累進課税のため、所得が増加するとそれに伴って税率も上昇します。
先程紹介した医師の平均年収「14,670,180円」の場合では、税率は33%となりますが、さらに収入が増えた場合は45%まで上昇します。
一方、法人税の場合、年課税所得が800万円以下であれば15%、800万円を超えると23.2%の税率が適用されるため、課税所得額によっては税金の負担を軽減することができます。
収入構造の違い
個人医院は、営利目的での経営が可能であり、個人事業主である開業医に全ての財産や収入は帰属します。
そのため、個人で自由に使える金額つまり可処分所得が大きくなります。
しかし、医療法人は、非営利団体であり、経営で得た利益は全て医療法人に帰属します。
そのため、在籍している医師は、医療法人からの給与というかたちで報酬を受け取ることになり、可処分所得は減少してしまいます。
医療法人に関するよくある質問
最後に、医療法人の理事長の年収に関するよくある質問について紹介します。
医療法人の理事長の年収に上限はある?
医療法人の理事長の年収に、明確な上限はありません。
特定医療法人には、3,600万円という上限が定められていますが、一般的な医療法人には上限はありません。
しかし、医療法人は非営利団体であるため、一般的な医療法人や事業者の役員報酬を大幅に上回るような高額な役員報酬は認められないことがあるため、注意してください。
しかし、特別な事情があり、それを証明することができれば、相場を上回る金額であっても妥当だと判断されることもあります。
医療法人の理事に親族がなることに制限はある?
基本的には、制限はありません。
医療法人の理事が全員親族であっても、認可されるため特別問題はありません。
しかし、千葉県など県によっては、親族以外を理事に任命するように定められている場合もあるため、お住いの地域に確認することをおすすめします。
なお、監査を行う監事には、親族を任命することはできません。
学生(研修医)の理事の報酬に上限はある?
結論からいうと、上限はありません。
研修医は、アルバイト禁止の規則があるため、理事報酬を支払うことはできないと考えている方も多くいますが、それは違います。
アルバイトが禁止されているのではなく、臨床研修に支障をきたすこと・プログラムで指定されている病院以外での診療が禁止されているため、非常勤理事として理事報酬を受け取ることは全く問題ありません。
金額についても、医学部生や未成年でないため、特に制限はありません。
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まとめ
今回は、医療法人の理事長について徹底解説しました。
理事長は、医療法人全体の代表として、法律的な部分の責任を負います。
責任が大きい分、高い収入を得ることができますが、いくつかの制限がある点は注意が必要です。
さらに、理事報酬を損金算入するためには、定期同額給与、あるいは事前確定届出給与を満たす必要があります。
また、個人事業主である個人医院と医療法人には、税金面や収入構造面で違いがあり、双方にメリット・デメリットが存在しています。
この記事を参考に総合的に判断してください。