医療法人の内部紛争とは?背景や理事長解任方法、対策等を徹底解説!
それぞれの保険、目的と保障リスクについて解説

医療法人の内部紛争とは?背景や理事長解任方法、対策等を徹底解説!

医療法人の経営現場では、理事長や理事の選任・解任、経営方針の違い、後継者問題などを巡る内部紛争が頻発しています。

これは株式会社と異なる特徴があるため、対立の激化や複雑化を招いている点が要因です。

さらに、医療法や行政の規制、事業承継や外部資本の参入など、医療法人特有の課題が紛争リスクを高めています。

そこで本記事では、紛争の背景や要因、理事長解任の手続き、予防策について解説します。

目次

医療法人に関する紛争の背景

法人保険と個人保険の違いとは?

医療法人の内部紛争は、理事長や理事の選任・解任、経営方針の違い、後継者問題などをめぐって発生します。

株式会社と異なり、医療法人は出資額に関係なく社員一人につき一議決権という仕組みです。

そのため、少数出資者でも多数派を形成すれば、創業者や現経営陣を経営から排除できる場合があります。

近年は高齢化や医療制度改革、事業承継のタイミングが重なり、親族や関係者間の意見対立が顕在化しやすくなっています。

医療法人特有の法規制や非営利性も紛争を複雑にする要因です。

さらに、医療法人の運営には厚生労働省や都道府県知事による認可や届出が必要な場面も多く、行政手続きの煩雑さも紛争の背景といえるでしょう。

医療法人での紛争要因

医療法人の内部紛争は多様な要因で発生し、経営の安定や医療サービスの質に大きな影響を及ぼします。

ここでは主な紛争要因を具体的に解説します。

経営権

経営権を巡る争いは、医療法人の内部紛争で最も多い事案です。

医療法人では社員一人一議決権の原則があり、出資額の多寡に関係なく多数派を形成可能です。

そのため、理事長や理事の選任・解任をめぐり、社員間や理事間で対立が生じやすいです。

特に理事長の交代や経営方針の転換を巡っては、社員総会や理事会での票の取りまとめが重要となり、根回しや派閥争いが激化することもあります。

経営権争いが長期化すると、法人の意思決定が停滞し、現場の混乱や職員の離職につながるケースもあります。

後継者問題

後継者問題は、医療法人の事業承継時に深刻な対立を生みやすい要素です。

現理事長の高齢化や病気、急な退任により、適切な後継者が不在の場合、親族間や関係者間で後継者選定を巡る争いが発生します。

親族経営が多い医療法人では、家族間の感情的な対立や相続問題が複雑に絡み、紛争が長期化する傾向があります。

また、後継者候補が複数いる場合は、それぞれの支持派閥が形成され、社員総会や理事会での対立が顕著になります。

後継者問題が解決しないまま放置されると、法人の存続自体が危ぶまれる事態も起こり得ます。

医療法の規制

医療法人は医療法に基づき設立・運営されており、経営権の移動や変更には厳格な法的手続きが求められます。

定款変更や合併、理事・理事長の選任・解任など、医療法や定款に従った手続きが必要です。

この法的規制が経営権争いを複雑化させ、手続きの瑕疵が訴訟に発展することもあります。

医療法の改正や行政指導の内容によっては、経営方針の見直しや組織体制の再構築が迫られることもあり、これが新たな対立の火種となる場合もあります。

医師と経営陣の対立

医療法人は医療の専門性と経営手腕の両立が求められる組織です。

医師と経営陣の間で、医療の質や経営効率、待遇面を巡る意見の相違が生じやすく、これが対立構造を生み出す場合もあるでしょう。

医師の待遇改善や勤務環境の整備を求める声と、経営の安定や効率化を重視する経営陣の意見がぶつかることで、内部対立が深刻化する場合があります。

特に医療現場の負担増加や診療報酬改定による収益悪化が続くなかで、双方の溝が深まる傾向が強まっています。

外部資本との摩擦

近年、医療法人への外部資本の参入や買収が増加しています。

外部資本による経営方針の変更や買収条件を巡って、既存の経営陣や医師、従業員との間で摩擦が生じやすくなっています。

特に買収後に新経営陣が収益性重視の経営に転換し、医療の質や雇用条件が悪化する場合、内部の反発が強まります。

また、買収価格や雇用維持などの条件を巡る交渉が難航し、紛争に発展するケースもあります。

外部資本の意向と現場の実情がかみ合わない場合、法人全体の方向性が不明瞭になり、職員のモチベーション低下や離職につながることもあります。

理事長解任から新しい理事長選任までのプロセス

医療法人で理事長を解任し、新たな理事長を選任するには、理事会と社員総会という二つの意思決定機関を適切に活用する必要があります。

ここでは、その具体的な手続きと注意点を解説します。

理事会と社員総会の違い

理事会は医療法人の業務執行や理事長の選任・解任を決定する機関です。

理事全員で構成され、出席理事の過半数の賛成で決議します。

一方、社員総会は医療法人の最高意思決定機関であり、理事の選任・解任など重要事項を決めます。

社員は一人一議決権で、過半数の出席と出席者の過半数の賛成が必要です。

社員総会は書面や代理人による議決権行使が可能ですが、理事会では認められていません。

理事会と社員総会の役割や権限を正しく理解することが、円滑な組織運営の基礎となります。

理事会において、理事長を解任し、新たな理事長を選任する方法

理事長の解任と新理事長の選任は、理事会での決議によって行います。以下の手順が一般的です。

理事会の招集

理事会の招集は通常理事長が行いますが、理事が理事長に対して理事会の開催を請求し、理事長が応じない場合は理事が自ら招集できます。

招集時には議題(理事長の解職など)を明示する必要があります。

招集通知の方法や期間は定款に則って進めます。

解職議案の提出

理事会の場で理事長の解職議案を提出します。

理事長は特別利害関係人となり、議決に参加できません。

出席した理事の過半数が賛成すれば、理事長を解職できます。

議案の提出時には、解職理由や今後の経営方針についても説明することが望ましいです。

理事長の選任議案の提出、審議及び採決

理事長を解職したら、その場で新理事長の選任議案を提出し、審議・採決します。

新理事長も理事会での過半数決議により選任されます。

なお、理事長は医師または歯科医師である必要があります。

新理事長の選任後は、行政への届出や登記手続きも速やかに進めることも大切です。

社員総会において、理事長を理事から解任する方法

理事会で理事長の解職が難しい場合や社員の過半数を掌握している場合は、社員総会で理事長を理事から解任することが可能です。

以下に手順を示します。

臨時社員総会の招集

総社員の5分の1以上の連名で臨時社員総会の招集を請求できます。

請求があった場合、理事長は20日以内に総会を招集しなければなりません。

招集通知には議題や日時、場所を明記します。

参考:山梨県(P2)

議長の選任

社員総会の議長は社員間の推薦や立候補で選出されます。

議長は可否同数の場合に議案の成否を決定します。

議長の公正な進行が、総会運営の円滑化につながります。

解任提案理由の説明や当該理事への質疑応答

社員総会では、理事長解任の理由説明や、当該理事への質疑応答が行われます。

ただし、必ずしも理由説明が必要とは限りません。

質疑応答を通じて、社員間の理解を深めることが重要です。

採決

理事の解任は、総社員の過半数の出席と出席者の3分の2の賛成で決議されます。

監事の解任には3分の2以上の賛成が必要です。

採決結果は議事録に記載し、必要に応じて行政への届出を行います。

参考:東京都

紛争の予防策

医療法人の内部紛争は、事前の備えと組織運営の工夫で大きく減らせます。

ここでは、主な予防策を解説します。

定款の整備と見直す

定款は医療法人の運営ルールを定める根本規則です。

理事や社員の選任・解任手続き、議決権の割合、意思決定の方法など、紛争の原因となりやすい事項を明確に規定しておくと、解釈の違いによる対立を防げます。

それから定款は医療法改正や社会情勢の変化に合わせて、定期的な見直しも欠かせません。

定款の内容が現状に合っているか、専門家とともにチェックすることをおすすめします。

適切な後継者育成計画を決める

後継者不在は経営権紛争の大きな要因です。

早期に後継者を選定し、医療現場や経営に関する経験を積ませることで、円滑な事業承継が可能になります。

後継者の選定基準や育成内容、権限移譲の時期などを明確にし、関係者で共有することが重要です。

後継者候補が複数いる場合は、透明な選定プロセスを設けることで、納得感を高められます。

意思決定プロセスの透明性を高くする

意思決定が不透明だと、経営陣への不信感が高まり、紛争の原因となります。

そこで、理事会や社員総会など公式な場で議事録を作成し、重要事項の決定過程を明確にすると、納得感と信頼性が高まります。

情報公開を積極的に行い、関係者間の情報格差をなくすことも効果的です。

意思決定の背景や理由を丁寧に説明する姿勢が組織の一体感を生みます。

弁護士等専門家に早めに相談する

紛争の兆候が見られた時点で、弁護士などの専門家に相談することで、法的リスクを最小限に抑えられます。

専門家は法規制や判例に基づいた冷静なアドバイスを提供し、紛争の未然防止や早期解決を支援します。

また、税理士や公認会計士など他分野の専門家とも連携し、多角的なサポートを受けることができます。

早期の相談は、組織の信頼性向上にも好影響でしょう。

医療法人についてのご相談は七福計画株式会社へお任せください

医療法人の内部紛争は、経営権や後継者問題、法規制、医師と経営陣の対立、外部資本との摩擦など多岐にわたります。

これらのリスクを放置すると、経営の停滞や地域医療への悪影響につながるため、早期の対策が不可欠です。

七福計画株式会社は、医療法人の経営課題や事業承継、組織運営、税務対策まで幅広くサポートしています。

経験豊富なコンサルタントが、経営状況に合わせて最適な解決策を提案し、トータルで支援します。

医療法人の安定経営や紛争予防のご相談は、ぜひ七福計画株式会社へお任せください。

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