医療法人の閉院の手続き~お知らせはいつまでにするべきかなどを解説~

医療法人の閉院の手続き~お知らせはいつまでにするべきかなどを解説~

医療法人やクリニックの閉院は、経営者や関係者にとって非常に大きな決断です。

閉院には法律上の手続きや関係者への対応、書類の整理など多くの準備が必要となります。

本記事では、医療法人の閉院手続きや注意点、よくある質問、事業承継の選択肢まで解説します。

閉院を検討している方や手続きで悩んでいる方は、ぜひ参考にしてください。

目次

医療法人の閉院の際に必要な手続きは?

医療法人の閉院には、厳格な法的手続きと多くの書類提出が求められます。

手続きの流れや注意点を事前に把握し、計画的に進めることが重要です。

閉院手続きをする際は、閉院理由(解散事由)が必要となる

医療法人を閉院する際には、「解散事由」が必要です。

医療法第55条により、定款で定めた事由の発生、目的業務の遂行不能、社員総会の決議、他法人との合併、社員の欠亡、破産手続開始、設立認可の取消しなどが解散事由となります。

多くの場合、経営者の高齢化や後継者不在、経営悪化などが理由となります。

解散理由によって必要な手続きや提出書類が異なるため、事前に確認しておくことが大切です。

参考:厚生労働省(医療法第55条)

解散認可申請が必要な場合

「目的たる業務の遂行不能」や「社員総会の決議」による解散の場合、都道府県知事の認可が必要です。

認可申請には、解散理由書、社員総会議事録、財産目録、貸借対照表、残余財産処分案などの書類を添付します。

社員総会の決議による場合は、総社員の3/4以上の賛成が必要です。

認可が下りるまでには一定の期間がかかるため、余裕を持って準備しましょう。

認可申請が不要な場合でも、解散届の提出が必要となるケースがあります。

参考:大阪府

解散届の届出が必要な場合

定款で定めた解散事由の発生や社員の欠亡による解散の場合は、都道府県知事への「解散届」の提出が必要です。

添付書類は、社員総会議事録(該当時)、財産目録、貸借対照表、残余財産処分案、解散及び清算人就任の登記事項証明書などです。

解散届の提出後、速やかに次の手続きに進みます。

解散認可申請や解散届などを提出した後の手続きの流れ

認可申請や解散届の受理後、以下の手続きが必要です。

解散の登記と清算人就任の登記を行う

解散後2週間以内に、解散登記と清算人就任登記を法務局で行います。

通常は理事が清算人となりますが、社員総会で別途選任も可能です。

清算人は法人の財産整理や債務弁済など重要な役割を担います。

参考:大阪府

医療法人解散登記完了届・清算人の就任登記届を提出する

登記完了後、所轄の都道府県や保健所に「解散登記完了届」と「清算人就任登記完了届」を提出します。

これにより行政機関が法人の現状を正確に把握できます。

清算手続きを行う

清算人は資産の換価、債権回収、債務弁済を行い、財産目録や貸借対照表を作成します。

残余財産は定款や社員総会決議に従い処分します。

清算期間中、官報で3回公告が必要です。

公告により債権者に債権申出の機会を与えます。

参考:株式会社兵庫県官報販売所

閉院について官報で公告する

清算手続きの一環として、官報で公告し、債権者に対して債権申出の機会を与えます。

公告は法律で義務付けられており、公告を怠ると後のトラブルにつながる可能性があります。

清算決了の登記を行い、清算決了届を提出する

全ての財産整理が終わったら、清算結了登記を行い、清算結了届を提出します。

これにより法人格が消滅します。

清算結了登記後は、税務署や年金事務所など関係機関への届出も行いましょう。

クリニックの閉院する際に必要な手続きは?

クリニックを閉院する際は、まず管轄保健所へ「診療所廃止届」を10日以内に提出します。

加えて、厚生局へ「保険医療機関廃止届」、税務署へ「個人事業廃止届」、年金事務所へ「健康保険・厚生年金保険適用事業所全喪届」など多岐にわたる届出が必要です。

X線装置や麻薬管理など特殊な設備・業務がある場合は、それぞれの廃止届も提出します。

従業員の雇用保険や社会保険の手続きも忘れずに行いましょう。患者や従業員への周知も早めに行い、トラブル防止に努めましょう。

参考:山形県

閉院後にレセプトの請求が遅れた場合、後から申請することはできる?

閉院後にレセプト(診療報酬請求)の提出が遅れた場合でも、後から請求できます。

請求権の時効は原則3年ですが、民法改正後は5年に延長されています。

遅延が判明したら、速やかに支払基金や国保連合会に連絡し、事情を説明しましょう。

再請求には「取り下げ願い」などの手続きが必要で、請求漏れが多い場合は手間も増えます。

資金繰りへの影響も考慮し、早めの対応が望ましいです。

時効を過ぎると請求できなくなるため、注意が必要です。

参考:社会保険診療報酬支払基金

閉院の手続き以外にやることは?

閉院手続き以外にも、従業員や患者への告知、カルテやレントゲンの保管など多くの対応が必要です。

これらを怠るとトラブルにつながるため、計画的に進めましょう。

従業員や患者様にはいつまでにお知らせしなければならない?

閉院が決まったら、従業員や患者にはできるだけ早く告知することが望ましいです。

従業員

スタッフには閉院の旨を個別面談や従業員を集めた説明会等で伝えましょう。

30日前までの告知が法律上の最低限ですが、理想は2〜3ヵ月前に伝え、退職金や再就職支援、社会保険の手続きなども説明します。

参考:厚生労働省(労働基準法第二十条)

患者様

患者には診療終了の2〜3ヵ月前までに案内し、継続治療が必要な方には他院への紹介状を作成します。

未収金の回収や、診療記録の引継ぎも適切に行いましょう。

患者との信頼関係を維持するためにも、丁寧な説明が大切です。

カルテやレントゲンは何年保管しなければならない?

カルテは法律で5年間、レントゲンフィルムは3年間の保管義務があります。

損害賠償請求のリスクを考慮し、10年〜20年の保管を行うケースも考えられます。

保管場所がない場合は、書類保管サービスの利用も検討しましょう。

カルテやレントゲンの保管期間を守らないと、法的責任を問われる可能性があります。

参考:厚生労働省

医療法人の閉院についてよくある質問

解約返戻金とは

ここでは、医療法人の閉院について、よくある質問に回答します。

病院が突然閉院する理由は?

病院やクリニックが突然閉院する主な理由は、経営者の高齢化や健康状態の悪化、後継者不在、経営難などです。

特に近年は後継者不足が深刻で、子どもや親族が承継を希望しないケースも多く、経営環境の悪化や患者数の減少も閉院の大きな要因です。

また、コロナ禍による収益悪化や人材確保の難しさも、閉院を決断するきっかけとなっています。

閉院と廃院の違いは?

「閉院」と「廃院」は、いずれも診療を停止することを意味しますが、一般的には「閉院」は一時的または恒久的な診療停止、「廃院」は再開の予定なく完全に事業を終了することを指します。

閉院は将来的に再開の可能性を残す場合にも使われますが、実務上はどちらも同様の手続きを要します。

医院の閉院手続き代行はどこに頼めばいい?

閉院手続きは煩雑なため、行政書士や税理士、医療専門のコンサルティング会社に依頼できます。

これらの専門家は、各種届出や書類作成、医療機器の処分、スタッフの社会保険手続き、患者への案内まで幅広くサポートします。

最近は事業承継やM&Aも含めてワンストップで対応するサービスも増えており、閉院コストを抑える提案も可能です。

専門家に依頼することで、手続きの漏れやトラブルを防ぎ、スムーズな閉院が実現できます。

費用は規模や業務内容によって異なるため、事前に見積もりを取りましょう。

閉院以外の選択肢は?(事業承継について)

閉院以外にも「事業承継」という選択肢があります。

事業承継は、親族や第三者に経営を引き継ぐ方法です。

事業承継には、出資持分の移転、持分の払い戻し、合併、事業譲渡など複数のスキームがあります。

親族間承継では相続や贈与、第三者承継では譲渡や合併が多く利用されています。

事業承継のメリットは、閉院コストの削減、スタッフの雇用維持、患者の継続診療、譲渡対価の獲得などです。

特にM&Aによる第三者承継は、地域医療の継続や経営基盤の強化、新規開業リスクの低減など多くの利点があります。

医療法人の承継は、法人格ごと引き継ぐため、廃院や新規開業の手続きが不要で、社員や理事長の変更だけで完了することも多いです。

医療法人の事業承継については、次の記事で詳しく解説しています。

関連記事:医療法人の事業承継とは?手続き方法やメリットなどを徹底解説!

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手続きや経営課題に悩んだ際は、信頼できる専門家に相談しましょう。

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