
医療法人の事業承継とは?手続き方法やメリットなどを徹底解説!
医療法人の事業承継は、医療機関の未来を守るために欠かせません。
経営者の高齢化や後継者不足が進むなかで、円滑な承継によって医療サービスの安定提供や地域医療の維持が実現できます。
本記事では、医療法人の事業承継の基本から具体的な手続き、持分の有無による承継方法、メリットやよくある質問まで解説します。
医療法人の事業承継とは?
医療法人の事業承継とは、現経営者が後継者へ経営権や財産権、運営ノウハウを含む事業全体を引き継ぐプロセスです。
親族への承継だけでなく、第三者へのM&Aによる承継も増えています。
医療法人には出資持分の有無や理事長の資格要件、社員構成の見直しなど、一般企業とは異なる独自の課題が存在します。
さらに、行政への各種届出や許認可手続きが必要となるため、スムーズな承継には専門家のサポートが不可欠です。
適切な事業承継は、医療機関の安定運営や地域医療の継続、スタッフや患者の安心につながります。
医療法人の事業承継で必要な行政手続きは?
行政手続きは承継内容や地域によって異なるため、事前確認が不可欠です。
事業承継で必要な手続きを表にまとめました。
手続き内容 | 提出先 | 主な書類例 |
---|---|---|
保険医療機関届出事項変更届 | 厚生局 | 保険医療機関指定通知書、役員変更届 |
医療法人登記変更 | 法務局 | 登記申請書、議事録 |
診療所開設・廃止届 | 保健所 | 開設届、廃止届、医師免許証、経歴書 |
レントゲン設置・廃止届 | 保健所 | 設置届、廃止届、漏洩検査報告書 |
公費指定医療機関申請 | 市区町村・都道府県 | 指定申請書 |
労災指定医療機関申請 | 都道府県労働局 | 労災指定申請書 |
持分ありの社団医療法人の事業承継の方法は?
持分ありの社団医療法人の事業承継には、親族間承継と第三者承継の2つの方法があり、それぞれに特徴と注意点があります。
いずれも出資持分や経営権の移転、税務対応が重要となります。
親族間承継の場合
親族間承継は、現経営者の子や親族が後継者となるケースです。
医療法人特有の出資持分や経営権の移転がポイントです。
出資持分の移転を行う
出資持分の移転は、相続・贈与・譲渡のいずれかで実施します。
相続や贈与では、後継者が高額な相続税・贈与税を負担する可能性があります。
医療法人では、出資持分と経営権が分離しているため、持分移転後に社員構成や議決権の調整も必要です。
経営権の確保には、社員総会での賛同を得ることが不可欠です。
出資持分の払い戻しを行う
持分の払い戻しによる承継は、先代経営者が退社し、持分の払い戻しを受けた資金を後継者に贈与します。
後継者はその資金で出資を行い、新たに社員となります。
この場合も贈与税や所得税など税負担が発生するため、事前の資金計画と税務対策が求められます。
認定医療法人を活用する
認定医療法人制度を活用すると、持分なし医療法人へ移行し、相続税・贈与税の納税猶予や免除の特例が適用される場合があります。
一定の要件を満たす必要があり、認定取得には手続きや事前準備が必要です。
持分の移行時に発生する経済的利益に対しても納税猶予が認められるため、税負担を大きく軽減できる可能性があります。
第三者承継の場合
第三者承継は、親族以外の医師や他の医療法人などが承継者となる方法です。
M&Aや合併、事業譲渡など多様なスキームが存在します。
出資持分の譲渡を行う
出資持分の譲渡は、第三者に対して有償で持分を移転する方法です。
譲渡後は、社員の入れ替えや議決権の調整が必要となります。
譲渡価格の決定や税務対応、関係者への説明が重要です。
持分の払い戻しを行う
持分の払い戻しによる第三者承継は、現経営者が退社し持分の払い戻しを受け、第三者が新たに出資して社員となります。
資金の流れや税務負担、社員構成の見直しが必要です。
合併する
合併は、複数の医療法人を統合し、新たな法人または既存法人に事業を引き継ぐ方法です。
合併には吸収合併と新設合併があり、資産・負債・スタッフや患者などの権利義務が包括的に承継されます。
合併後は持分なし医療法人となるケースが多く、都道府県知事の認可が必要です。
経営基盤の強化やコスト削減が期待できますが、手続きが煩雑な点に注意しましょう。
事業を譲渡する
事業譲渡は、医療法人が運営する病院やクリニックの資産・負債・営業権などを第三者に譲渡する方法です。
譲渡対象や価格の決定、許認可や契約の引き継ぎなど、個別の調整が必要です。
事業譲渡後は、法人格や資産が移転しないため、承継後の運営体制や患者・スタッフへの影響に配慮しましょう。
なお、医療法人のM&Aに関しては、次の記事で解説しています。
ぜひ参考にしてください。
関連記事:医療法人におけるM&Aとは?5つのスキームや事例を紹介します | マネージメントデザイン
持分なしの社団医療法人の事業承継の方法は?
持分なし社団医療法人の事業承継は、主に退社入社方式が用いられます。
譲渡側の社員・理事・監事を退社させ、譲受側の人員に入れ替えることで承継が完了します。
出資持分がないため、譲渡対価は役員退職金や基金返還などで調整されます。
合併や事業譲渡、分割も選択肢となり、都道府県知事の認可が必要です。
医療法人が事業継承を行うことのメリットは?
医療法人が事業承継を適切に進めることで、経営の安定や医療サービスの質の維持、地域医療への持続的な貢献など、多くのメリットが得られます。
以下に主なメリットを解説します。
医療機関の安定的な運営を継続できる
事業承継を計画的に実施することで、経営の混乱や業務の停滞を未然に防げます。
経営者が突然交代した場合、スタッフや患者に不安が広がり、診療体制やサービスの質が一時的に低下するリスクがあります。
しかし、承継を段階的に進めることで、既存の患者やスタッフとの信頼関係を保ちつつ、新体制へスムーズに移行できます。
その結果、医療機関の閉鎖や事業縮小のリスクを大きく減らし、安定した運営が長期的に続きます。
高いレベルの医療サービス提供を継続できる
事業承継を通じて、長年培われた医師やスタッフの知識・技術、経営ノウハウが次世代に確実に引き継がれます。
新しい経営者が現場の経験や理念をしっかりと受け継ぐことで、医療サービスの質を維持でき、患者にとっても安心感が生まれます。
承継プロセスでは、現場の課題や改善点も共有されるため、サービス向上のきっかけにもなります。
地域医療の発展に貢献できる
円滑な事業承継は、地域住民への医療提供を途切れさせません。
医療法人が存続し続けることで、地域医療の発展や住民の健康維持に大きく貢献します。
万が一、医療機関が承継されずに廃院となれば、地域医療に空白が生じ、住民の健康リスクが高まります。
承継によって、地域社会に対する責任を果たし続けることができます。
後継者育成の機会となる
事業承継の過程は、後継者を育成する絶好の機会です。
早い段階から後継者候補に経営ノウハウや医療技術、組織運営の知識を伝えることで、将来の成長や組織の発展につながります。
後継者自身も、経営者としての自覚や責任感が高まり、仕事のモチベーション向上にもつながります。
そして、次世代のリーダーが自信を持って経営を引き継ぐ土壌が整います。
税制上の優遇措置が適用される場合がある
認定医療法人への移行など、一定の条件を満たす場合には、出資持分にかかる相続税や贈与税の納税猶予や免除が受けられることがあります。
そして、後継者の税負担が大幅に軽減される可能性があります。
ただし、優遇措置の適用には厳格な要件や手続きが必要なため、専門家のアドバイスを受けながら進めることが重要です。
税負担の軽減によって、後継者が安心して経営を引き継ぐことができる環境が整います。
医療法人についてよくある質問
医療法人の事業承継や運営に関しては、さまざまな疑問がでてくるでしょう。
ここでは代表的な質問に回答します。
医療法人で後継者がいない場合はどうしたらいいの?
後継者がいない場合、医療法人の解散や第三者への承継(M&A)が主な選択肢です。
理事長は医師または歯科医師でなければならず、親族に資格者がいない場合は第三者承継が現実的です。
売却価格は保険診療の2〜3ヵ月分と固定資産の帳簿価格が目安となります。
計画的な準備と専門家のサポートが重要です。
医療法人が株式を保有していいの?
医療法人には、法的に有価証券保有の制限はありませんが、「確実な有価証券」に限定されています。
売買利益を目的とした株式保有や支配権を有する株式の保有は適当でないとされています。
運用方針や内部統制を明確にし、理事会決議を経ることが望ましいです。
医療法人と株式会社の違いは?
医療法人は非営利法人であり、地域医療の安定提供が目的です。
株式会社は営利法人で、株主への利益還元を重視します。
意思決定機関や事業範囲、税制上の扱いも異なります。
医療法人は医療・介護事業に限定され、社員総会や理事会で運営されます。
医療法人についてのご相談は七福計画株式会社へお任せください
医療法人の事業承継は、経営の安定や地域医療の発展に直結する重要なテーマです。
親族間・第三者間での承継方法や行政手続き、持分の有無による違いなど、専門的な知識と準備が求められます。
七福計画株式会社は、累計3,000件を超える豊富な実績と、弁護士・税理士・ファイナンシャルプランナーとの強固なネットワークを活かし、医療法人の事業承継や経営課題をワンストップでサポートします。
お客様の状況を丁寧にヒアリングし、最適な解決策をご提案しますので、安心してご相談ください。