医療法人と株式会社の違いは?禁止事項や開業医との違いも解説!

医療法人と株式会社の違いは?禁止事項や開業医との違いも解説!

医療法人と株式会社は、どちらも法人格を持つものの、その目的や運営方法、法的な規制、税制、資本構造など多くの点で根本的な違いがあります。

これらの違いを理解することは、医療機関の経営や事業承継を考えるうえで非常に重要です。

本記事では、医療法人と株式会社の違いを中心に、関連する制度や注意点について解説します。

目次

医療法人と株式会社の違いは?

医療法人と株式会社は「非営利性」と「営利性」という根本的な違いを持ち、それが経営や税制、資本構造など多岐にわたる違いを生み出しています。

まずは主な違いを表で整理します。

比較項目 医療法人 株式会社
目的・活動領域 地域医療・介護サービスの提供(非営利)を行う 利益追求・多業種展開(営利)している
法的地位・規制 医療法に基づく厳格な規制・許認可が必要である 会社法に基づく設立、業種により規制されている
資本構造・所有権 社員=出資者。出資持分制または持分なしとなる 株主が株式を所有する
税制上の扱い 法人税率は固定、特定法人なら優遇措置もある 一般法人税率が適用される
配当 配当禁止、利益は再投資される 配当可能、株主へ利益分配する
議決権 「一社員一議決権」である 「一株一議決権」である
事業承継 後継者は医師・歯科医師に限定される 後継者に資格制限はない
解散時の残余財産 国庫等に帰属する 株主に分配される

目的と活動領域の違い

医療法人は、地域医療や介護サービスの提供を目的とし、社会貢献を重視しています。

医療法により、医療・介護分野以外の事業展開は原則として認められていません。

営利目的の事業や投資活動は厳しく制限されており、利益は法人内で再投資されます。

これに対し、株式会社は利益追求を目的とし、業種や事業内容にほとんど制限がありません。

新規事業への参入や多角経営も柔軟に行えるため、成長戦略の幅が広いです。

株式会社は利益を株主に還元することが最終目標となるため、経営判断も利益最大化を軸に行われます。

法的地位と規制の違い

医療法人は医療法に基づき、設立や運営に際して都道府県知事の認可が必要です。

定款や社員総会、理事会などの組織運営も法令で細かく規定されています。

行政庁による監督も厳しく、毎年の事業報告や会計監査が義務付けられています。

株式会社は会社法に基づき設立され、登記を行えば設立が完了します。

設立後の運営は株主総会や取締役会で行われますが、医療法人ほどの厳格な行政監督はありません。

業種によっては許認可が必要な場合もありますが、医療法人に比べて規制は緩やかです。

資本構造と所有権の違い

医療法人には「持分あり」と「持分なし」の2種類があります。

持分あり医療法人では、出資者が「社員」となり、出資割合に応じた持分を持ちますが、利益配当はできません。

持分なし医療法人では、出資者の持分はなく、法人の財産はすべて法人のものとなります。

株式会社は株式を発行し、株主が所有権を持ちます。

株主は保有株式数に応じて議決権や配当を受ける権利を持ちます。

株式の譲渡や売買も自由に行えますが、医療法人の持分は譲渡や相続に制限がある場合が多いです。

税制上の扱いの違い

医療法人には法人税が適用され、税率は23.2%(2025年6月時点)で固定されています。

特定医療法人や社会医療法人の場合は、さらに優遇措置が受けられる場合もあります。

個人開業医と比較すると、所得が高い場合には税負担が軽減される可能性があります。

株式会社は一般の法人税率(23.2%)が適用され、利益に応じて税金が課されます。

医療法人の場合、利益配当が禁止されているため、法人内での資産形成や再投資がしやすいという特徴があります。

参考:国税庁

配当の違い

医療法人では、剰余金の配当が法律で禁止されています。

得られた利益は医療サービスの充実や設備投資、従業員の福利厚生などに再投資されます。

株式会社は、利益の一部を株主に配当することができます。

株主への利益還元が経営の大きな目的となるため、配当方針も重要な経営判断の一つです。

議決権の違い

医療法人は「一社員一議決権」制を採用しています。

出資持分の多寡に関わらず、社員1人につき1票が与えられます。

株式会社は「一株一議決権」制で、株式数に応じて議決権が決まります。

これにより、株式会社では大株主が経営に大きな影響を持つ一方、医療法人では出資額に関係なく平等な意思決定が行われます。

医療法人のメリット

医療法人には、個人開業医や株式会社にはない多くの利点があります。

まず、医療法人は複数の医療機関や介護施設を同時に開設・運営できるため、地域医療への貢献度を高めたり、事業規模を拡大したりすることが可能です。

また、事業承継の面でも優れており、理事長の交代によってスムーズに経営を継続できる仕組みが整っています。

所得が高い場合には、法人税率が適用されることで税負担が軽減される可能性があり、経営の安定化につながるでしょう

株式会社のメリット

株式会社の最大の特徴は、資本調達の柔軟性が非常に高い点です。

株式を発行したり増資したりすることで、多額の資金を迅速に集めることが可能です。

また、業種や事業内容に制限がないため、多業種への参入や新規事業の展開も自由に行えます。

利益が出た場合には、株主への配当という形で利益還元ができる点も大きな魅力です。

医療法人と開業医の違いは?

医療法人と開業医(個人医院)は、経営形態や事業展開、税制、責任範囲などで明確な違いがあります。

開業医は医師個人が経営主体となり、原則として1か所のみの診療所を開設できます。

収入はすべて個人所得となり、所得税が課されます。

事業承継時には、相続や贈与による引継ぎが必要で、手続きが煩雑です。

医療法人は法人格を持ち、複数の診療所や介護施設を運営できます。

法人税が適用され、社会保険の加入も義務付けられます。

事業承継時には理事長交代でスムーズに引き継ぐことができるため、後継者問題にも柔軟に対応できます。

なお、医療法人のメリットやデメリットについては次の記事でも解説しています。

関連記事:医療法人化のメリットやデメリットについて解説!リスク対策は保険で対応

株式会社が病院経営に参入すること、医療機関を開設すること、医療行為を行うことは禁止されている

株式会社や合同会社などの営利法人は、医療法第7条7項により、営利目的で病院や診療所などの医療機関を開設することが禁止されています。

これは、利益優先の経営が患者の利益や医療の質を損なうリスクがあるためです。

医療法人は非営利性が求められ、剰余金の配当も禁止されています。

株式会社が医療機関の経営に直接参入することや、医療行為を行うことはできません。

株式会社が医療機関に対してサービスを提供したり、医療機関の建物や設備を貸与したりすることは可能ですが、経営や診療には関与できません。

参考:厚生労働省(医療法第7条7項)

株式会社が医療法人に出資することは可能

株式会社が医療法人に対して出資や寄附を行うことは可能ですが、出資した場合でも株式会社が医療法人の「社員」となり、議決権を持つことはできません。

医療法人の社員は原則として医師や歯科医師に限られ、株式会社が経営に直接関与することは認められていません。

議決権を得るには、株式会社が指名した個人が社員となるなど、間接的な方法しか認められていません。

医療法人の非営利性を損なわない範囲でのみ、出資や寄附が認められています。

出資持分がある場合でも、解散時の残余財産は国庫等に帰属するため、株式会社の資産形成目的での出資は制限されています。

よくある質問

3.最高解約返戻率が70%超85%以下の法人保険

医療法人と株式会社の違いや運用に関して、よくある質問に回答します。

医療法人は株式を保有していいの?

医療法人が株式を保有すること自体は禁止されていませんが、売買利益を目的とした株式投資は適切とされていません。

厚生労働省の「医療法人運営管理指導要綱」でも、資産運用は「確実な有価証券」に限定することが推奨されています。

国債や地方債など安全性の高い証券は認められますが、リスクの高い株式や大量保有による企業支配は非推奨です。

医療法人の資産運用については、次の記事でも詳しく解説しています。あわせてご覧ください。

関連記事:医療法人は資産運用をしていいの?考え方やおすすめの資産運用を紹介

参考:厚生労働省

医療法人での株主は誰?

医療法人には株式会社のような「株主」は存在しません。

医療法人の出資者は「社員」と呼ばれ、社員総会で重要事項を決定します。

社員は原則として医師や歯科医師が中心で、出資持分の有無によって権利関係が異なります。

医療法人にしない理由は?

開業医が医療法人化しない主な理由は、出資金への配当が禁止されていること、接待交際費の経費計上に制限があること、事務処理や行政対応の負担が増えることなどです。

個人事業主としての自由度やシンプルな経営を重視する場合、医療法人化を選ばないケースも多いです。

また、医療法人化により社会保険の加入が義務化される点も、経営者にとっては負担となる場合があります。

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