医療法人を解散する理由とは?手続きや残余財産の処理方法を紹介
「医療法人の解散理由とは?」
「医療法人の解散に必要な手続きや費用は?」
と疑問をお持ちの方がいるかもしれません。
医療法人の解散時は、清算手続きや届け出の提出、官報公告の公告・催告など、さまざまな手続きが必要であるため、しっかりと情報を集めて準備を進めていくことが重要です。
今回の記事では、医療法人の解散を検討している方に向けて、医療法人を解散するまでの流れや解散理由、必要な手続き、医療法人の解散に関するよくある質問などについて解説します。
医療法人とは?
医療法人とは、医療施設を開設することを目的として設立された法人です。
医療施設には、病院や診療所、介護老人保健施設などが含まれます。
医療法人を設立する場合、定款または寄附行為を作成した上で、医療法人がある地域の都道府県知事から認可を得る必要があります。
株式会社などの組織と比較すると、医療法人は営利性を求めていない点が特徴と言えるでしょう。
医療法人を設立する目的
一般的に医療法人は「医療体制を確立すること」を目的として設立されます。
個人事業主としてクリニックを運営するよりも、医療法人を設立した方が社会的信用性が向上し、資金を集めやすくなります。
ちなみに厚生労働省の資料では、医療法人を設立する目的は「病院、医師もしくは歯科医師が常時勤務する診療所又は介護老人保健施設を開設すること」とされています。
参照:厚生労働省「医療法人の基礎知識」
医療法人の解散とは
医療法人の解散とは、医療法人としての業務を停止し、法人格を消滅させることです。
債務超過の状態が続いてしまった、後継者が見つからないなどの理由で、医療法人の解散が行われることがあります。
医療法人を解散する際は、法人が所有していた財産を精算しなくてはいけません。
医療法人を解散するまでの流れ
医療法人を解散を検討している方は、大体の流れを押さえておきましょう。
医療法人を解散するまでの流れは、以下の通りです。
- 解散事由(解散理由)を明確にする
- 社員総会で解散する旨を決議する
- 解散登記、清算人就任登記を行う
- 行政に届け出(医療法人解散届など)を提出する
- 清算手続きを行う
- 清算結了届を提出する
清算手続きが完了したら、医療法人の解散が完了したということになります。
医療法人の解散手続きにかかる時間
それでは、どれくらいの期間で医療法人を解散できるのでしょうか?
一般的には解散手続きに「最短でも2ヵ月以上」の期間を要します。
医療法人の解散は社員総会で決議をすれば完了ではなく、届け出の提出や行政の認可、清算手続きなどのプロセスが必要になるためです。
医療法人の解散手続きを行う場合、スケジュールに余裕を持って準備を進めていくことをおすすめします。
医療法人を解散する理由
医療法人は大きく「医療法人社団」と「医療法人財団」に分けられます。
医療法人社団 | 人の集まりが基盤となって設立された医療法人 |
---|---|
医療法人財団 | 財産が基盤となって設立された医療法人 |
現存するほとんどの医療法人は「医療法人社団」です。
医療法人財団は営業の自由度が低く、設立のハードルが高いことが背景に挙げられます。
以下で、それぞれの解散事由を確認していきましょう。
医療法人社団
医療法人社団の解散事由は以下の通りです。
- 定款で定めた解散事由の発生(「法人の存続期間は設立から◯年とする」など)
- 目的たる業務の成功の不能
- 社員総会の決議(総社員4分の3以上の同意が必要)
- 他法人との合併
- 社員(社員総会の構成メンバー)の欠亡
- 破産手続開始決定
- 都道府県知事による設立認可取消し
医療法人財団
医療法人財団の解散事由としては、以下が挙げられます。
- 寄附行為で定めた解散事由の発生
- 目的たる業務の成功の不能
- 他法人との合併
- 破産手続開始決定
- 都道府県知事による設立認可取消し
医療法人を解散する際に必要な手続き
医療法人を解散する場合、具体的にどのような手続きが必要になるのでしょうか?
都道府県知事の認可
医療法人を解散する際は、都道府県知事の認可が必要なケースがあります。
医療法人は公益性を有する法人であり、恣意的な解散を防ぐ必要があるためです。
以下の理由で解散する場合は、都道府県知事の認可を受けましょう。
社団医療法人 | 目的たる業務の成功の不能、社員総会の決議 |
---|---|
財団医療法人 | 目的たる業務の成功の不能 |
認可を受けられないと、医療法人を解散することはできません。
都道府県知事に届け出を提出
解散理由によっては、都道府県知事に届け出を提出しなくてはいけません。
以下の解散理由である場合、提出する届け出を準備してください。
社団医療法人 | 定款で定めた解散事由の発生、社員の欠乏 |
---|---|
財団医療法人 | 寄附行為で定めた解散事由の発生 |
清算人を選任
清算人とは、医療法人の解散時に清算事務を執行する役割のことです。
医療法人を解散するためには、清算人を選任しなくてはいけません。
原則、理事が清算人になりますが、以下のようなケースもあります。
- 定款(もしくは寄附行為)で定められている
- 社員総会で清算人を選任している
清算人は現務を結了させた後、債務弁済などの作業を行います。
清算は裁判所の監督下となり、裁判所はいつでも調査を実施することが可能になります。
官報公告の催告
清算人は官報公告の催告を行わなくてはいけません。
清算人は「就任後2ヶ月以内」に「最低でも3回」の官報公告を行います。
官報公告では、債権者が一定の期間内に債権権の申出をすべき旨を催告します。
催告している期間は債務の弁済をすることはできません。
清算手続きの内容
清算手続きとは、医療法人を解散する際に残った財産を整理するプロセスのことです。
以下で、清算手続きの内容を確認しておきましょう。
現務の結了
現務の結了とは、解散前に取り組んでいた事務作業を完了させることです。
具体的には、従業員の雇用契約解消、賃貸借契約の解約(事務所など)をはじめとした事務作業を行います。
現務の結了に必要であれば、新たな契約を結ぶなどの行為(事務作業に必要な事務所を一時的に借りるなど)も認められています。
債務の弁済
債務の弁済とは、債権者に債務を弁済する法律行為のことです。
具体的には、借金や請負代金の精算などを行います。
清算人は「就任後2ヵ月以内」に債権者に向けて、最低3回は官報公告を行う必要があります。
官報公告とは、特定の事項を官報に掲載して情報を公開することです。
官報公告では、債権者に対して債権の申し出を催告します。
残余財産の処分
清算手続きでは、財産残余(債務の弁済後に残った財産)を処分する必要があります。
定款又は寄附行為で定めた通り、残余財産の処分を進めます。
定款又は寄附行為で帰属先が定められていない場合、財産残余は国に寄付することになります。
持分あり医療法人と持分なし医療法人によって、処理方法が異なる可能性があるので注意してください。
医療法人の持分に関しては、以下の記事で詳しく解説しています。
関連記事:持分あり医療法人における出資持分の「贈与」とは?具体的な手順を解説
医療法人の解散に関するFAQ
ここでは、医療法人の解散に関するFAQを紹介します。
残余財産は退職金に回すべき?
残余財産とは、「法人の解散で債務を弁済した後に残った財産」のことです。
医療法人の場合、残余財産は拠出金しか返ってきません。
一般的に残りは国に寄付することになります。
そのため、残余財産が残らないように退職金プランを設計する医療法人が多いです。
解散後は税務調査が入りやすいって本当?
医療法人の解散時は大金が動くことになり、税務調査が入りやすいと言われています。
税務調査にも対応できるように、資料を準備するなどして対策しましょう。
もし資料の準備などでお困りの際は、七福計画までお気軽にお問い合わせください。
記事まとめ:医療法人についてのご相談は七福計画株式会社へお任せください
今回の記事では、医療法人の解散理由や医療法人を解散するまでの流れ、必要な手続き、清算手続きの内容などについて解説しました。
医療法人の解散には、複雑な手続きが必要になります。
検討すべき項目があり、何から着手すべきかわからないという医療法人も少なくありません。
七福計画株式会社は医療法人の解散手続きをサポートしています。
解散手続きのみならず、経営支援や福利厚生、資金対策など幅広い支援を行っています。
七福計画株式会社への累計相談件数は3,000件以上にもおよび、多くの実績を残してきました。
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