
医療法人における出資持分とは?確認方法や相続・譲渡について解説!
「医療法人における出資持分とは?」
「出資持分を確認する方法とは?」
と疑問をお持ちの方はいませんか。
出資持分ありの医療法人か、出資持分なしの医療法人かによって、相続や譲渡、買取請求などの対応方法が異なる可能性があります。
今回の記事では、医療法人における出資持分に関する基礎知識をはじめ、出資持分あり医療法人と出資持分なし医療法人の比較などについて解説します。
出資持分の確認方法についても説明するので、ぜひ参考にしてください。
医療法人における出資持分とは?
厚生労働省の資料によると、出資持分とは「定款の定めるところにより、出資額に応じて払戻し又は残余財産の分配を受ける権利」のことです。
出資持分のほかに「持分」や「出資金」、「出資」など、さまざまな呼び方があります。
株式会社で株主がもつ「財産権」と役割が似ていますが、医療法人には非営利性が求められるため、仕組みが異なります。
以下で両者の違いについて、詳しく確認していきましょう。
株式会社における財産権との違い
株主がもつ財産権の「株式持分」は、株主総会での「議決権」や「残余財産分配請求権」などの権利もセットになっています。
一方、医療法人における議決権は、必ずしも出資者に与えられるとは限りません。
以下の表で、株式会社における財産権と医療法人における出資持分の違いをまとめました。
法人の種類 | 株式会社 | 医療法人 |
---|---|---|
最高意志決定機関 | 株主総会 | 社員総会 |
最高意志決定機関における議決権者 | 株主 | 社員 |
議決権の割合 | 株式数に応じて異なる | 社員1名につき1票 |
持分・財産権保有者 | 株主 | 出資者 |
このように医療法人と株式会社では、仕組みが異なることがわかります。
出資持分あり医療法人・出資持分なし医療法人に関する基礎知識
医療法人は出資持分の有無によって、「出資持分あり医療法人」と「出資持分なし医療法人」に分けられます。
以下でそれぞれについて確認していきましょう。
出資持分あり医療法人とは
厚生労働省の定義によると、出資持分あり医療法人とは「社団たる医療法人であって、その定款にこの持分に関する規定を設けている医療法人」のことです。
令和4年においては、医療法人全体の約65%が出資持分あり医療法人であることがわかっています。
しかし、平成18年に医療法が改正されたことにより、現在は出資持分あり医療法人を新設することはできません。
出資持分あり医療法人には払戻を請求されるリスクなどがあるため、厚生労働省は出資持分なし医療法人に移行することを推奨しています。
出資持分なし医療法人とは
厚生労働省の定義によると、出資持分なし医療法人とは「定款に持分に関する規定を持たず、現に持分が一切存在しないものを持分なし医療法人」のことです。
出資持分あり医療法人と比較すると、出資持分なし医療法人では非営利性がより徹底されており、地域医療の安定性の確保につながるとされています。
出資持分あり医療法人・出資持分なし医療法人の比較
出資持分あり医療法人と出資持分なし医療法人にはさまざまな違いがあります。
以下の表で、両者の違いを簡単にまとめました。
医療法人の種類 | 出資持分あり医療法人 | 出資持分なし医療法人 |
---|---|---|
相続 | 相続可 | 相続不可 |
買取請求 | 出資割合に応じた財産を払い戻せる | 出資割合に応じた財産を払い戻せない |
解散 | 出資割合に応じた財産を払い戻せる | 出資割合に応じた財産を払い戻せない |
譲渡 | 譲渡可 | 譲渡不可 |
贈与 | 贈与可 | 贈与不可 |
相続
相続とは、亡くなった人の財産を特定の人が引き継ぐことをいいます。
出資持分あり医療法人の場合、相続人に全ての財産を相続することが可能です。
相続人が医師である必要はありません。
しかし、相続税を現金で支払う必要があるため、納税資金の問題を考える必要があります。
一方、出資持分なし医療法人は財産権を持たないため、相続はできません。そのため、納税資金を用意する必要もありません。
ただ、基金拠出型医療法人(基金制度を採用している出資持分なし医療法人)の場合、基金が相続税の対象となるため注意してください。
買取請求
買取請求とは、自己の有する財産を買い取ってもらう制度です。
出資持分あり医療法人の場合、出資割合に応じて財産の払い戻しを請求できます。
例えば、2人の医師がそれぞれ1,000万円を出資したケースを考えてみましょう。
数十年後の財産が2億円の場合、1人あたり1億円の払い戻しを請求できます。
一方、出資持分なし医療法人の場合、出資者は財産の払い戻しを請求できません。
ただし、基金拠出型医療法人の場合については、出資者が支払った分の金額しか返済されません。
解散
医療法人の解散とは、法人格を消滅させて事業活動を停止する行為のことです。
出資持分あり医療法人を解散する場合、出資割合に応じた金額が出資者に返還されます。
一方、出資持分なし医療法人では、解散時に財産が出資者に返還されることはありません。
財産が残っていても国に寄付することになります。
ただし、基本拠出型医療法人の場合については支払った金額の返還を求めることが可能です。
医療法人を解散する理由については、以下の記事を参考にしてください。
関連記事:医療法人を解散する理由とは?手続きや残余財産の処理方法を紹介
譲渡
譲渡とは、有償無償を問わず、土地や建物、株式、宝石などの所有資産を移転させる行為のことです。
出資持分あり医療法人は、所有している財産を譲渡できます。
一方、持分なし医療法人の場合は譲渡という概念がありません。
なお、財産を譲渡する際は後々のトラブルを防止するために、払戻請求書や譲渡契約書などを作成しておくことが推奨されています。
贈与
贈与とは、所有している財産を特定の誰かに無償で譲る行為のことです。
出資持分あり医療法人においては贈与が認められています。
一方、出資持分なし医療法人では財産を贈与することはできません。
医療法人における贈与については、以下の記事で詳しく解説しています。
関連記事:医療法人の持ち分ありの相続問題について|財産の移転方法を解説
医療法人の出資持分に関する基礎知識
以下で、医療法人の出資持分に関する基礎知識を紹介していきます。
医療法人の出資持分を確認する方法とは?
医療法人の出資持分は「定款」で確認できます。
例えば、払戻し請求に関して「社員資格を喪失した者は出資割合に応じて払い戻しができる」などと記載されている場合、出資持分があるということです。
定款が手元にない場合、各都道府県の医療課で定款の閲覧請求を行ってください。
東京都や神奈川県のようにオンラインで定款を閲覧できるところもあります。
医療法人における出資持分の相続税評価とは?
相続税評価とは、相続税を計算する際に財産の価値を評価することです。
相続税評価に基づいて課税額が決まります。
医療法人における出資持分の場合、「非上場株式(取引相場のない株式)」に準じて評価が行われます。
医療法人では余剰金の配当が禁止されており、出資分の評価が利益に応じて上がることになります。
そのため、相続税の支払いについても考慮しておくことが大切です。
医療法人の出資持分譲渡にかかる税金はどれくらい?
出資持分譲渡とは、出資持分を移転させる行為のことです。
譲渡において発生する税金は「譲渡所得」と「退職所得」になります。
譲渡によって利益が発生する場合、譲渡所得に対して20.315%の税率で計算する必要があります。
退職所得の場合、超過累進税率が適用されており、金額に応じて課税率が異なるため注意してください。
記事まとめ:医療法人についてのご相談は七福計画株式会社へお任せください
今回の記事では、医療法人における出資持分についての基礎知識を解説しました。
医療法人は「出資持分あり医療法人」と「出資持分なし医療法人」に分けられ、財産に関する手続きがそれぞれで異なります。
医療法人の財産に関してお困りごとがございましたら、ぜひ七福計画株式会社にご相談ください。
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