医療法人に適用される概算経費とは?計算方法や注意点を解説!

医療法人に適用される概算経費とは?計算方法や注意点を解説!

「医療法人における概算経費とは?」
「概算経費ではどう計算すればいい?」

と疑問をお持ちの方がいるかもしれません。

概算経費とは、実額ではなく概算経費で必要経費を算出する方式です。

経費の集計を簡略化できるというメリットはありますが、いくつかのポイントに注意する必要があります。

今回の記事では、医療法人に適用される概算経費に関する基礎知識をはじめ、計算方法や概算経費のメリット、注意点などについて解説します。

目次

医療法人に適用される概算経費とは

概算経費とは、正式名称が「社会保険診療報酬の所得金額の特例」という制度で、医療法人に適用される税制優遇措置のことです。

社会保険診療報酬に関連する必要経費を計算する際、原則は「実額(実際に支払った金額)」で計算します。

一方、同制度では一定の条件を満たしている場合、「概算経費」を用いて計算することが可能になります。

概算経費の詳細については、国税庁のホームページを参考にしてください。

参照:国税庁「第67条 《社会保険診療報酬の所得の計算の特例》関係

概算経費の特例が適用されるケース

それでは、どのような場合に概算経費の特例が適用されるのでしょうか?

概算経費が適用されるケースは、以下の要件を満たす場合に限ります。

  • 特定の年の社会保険診療報酬が5,000万円以下の場合
  • 自由診療を含めた収入総額が7,000万円以下の場合

具体例で概算経費が適用されるケースを見ていきましょう。

  • 社会保険診療報酬:2,000万円
  • 自由診療:3,000万円

上記の場合は、自由診療を含めた収入総額が「5,000万円」となるため、概算経費の特例が適用されるということです。

医療法人における概算経費の計算方法

ここでは、医療法人における概算経費の計算方法を確認していきましょう。

概算経費の速算表は以下の通りです。

社会保険診療報酬 概算経費
2,500万円以下 社会保険診療報酬×72%
2,500万円超3,000万円以下 社会保険診療報酬×70%+50万円
3,000万円超4,000万円以下 社会保険診療報酬×62%+290万円
4,000万円超5,000万円以下 社会保険診療報酬×57%+490万円

例えば、社会保険診療報酬が「3,500万円」の場合、③の概算経費が適用されるため、「2,460万円」で税金を算出します。

概算経費の具体例

概算経費が有効に働くケースを確認していきましょう。

例えば、社会保険診療報酬が「4,000万円」、実額経費が「2,000万円」のケースです。

速算表の③が適用されるため、概算経費は「2,770万円」となります。

この場合、実際の経費に加えて「770万円」を余分に経費として計算できるということです。

ただし、必ずしも概算経費が有利になるとは限らないため、医療法人ごとに最適な計算方法を見極める必要があります。

医療法人における概算経費のメリット

概算経費を用いることで医療法人はどのようなメリットを得られるのでしょうか?

以下で詳しく確認していきましょう。

経費を計算する手間を省ける

経費を計算する手間を省ける点は、概算経費を用いる最大のメリットと言っても過言ではありません。

社会保険診療報酬に応じて、概算経費があらかじめ定められているため、実際に発生した経費は関係ないのです。

そのため、経費を一つひとつ入力したり、経費データを整理したりする必要がありません。

特に人員が限られており、会計処理の手間を省きたい場合などに有効でしょう。

ただ、自由診療で使った経費には適用されないため、別途計算する必要があります。

実額経費よりも税金を抑えられる可能性がある

概算経費を活用するメリットとして、実額経費よりも税金を抑えられる可能性がある点が挙げられるでしょう。

上記でも紹介しましたが、例えば社会保険診療報酬が「4,000万円」、実額経費が「2,000万円」の場合、実際の経費に加えて「770万円」を算入できます。

経費の金額が大きいほど所得が減り、税金の負担を軽減することが可能です。

ただし、必ずしも税金の負担を軽減できるわけではないため、事前にシミュレーションを行うことをおすすめします。

事前の申請が必要ない

概算経費を利用する場合でも、前に特別な申請を行う必要はありません。

概算経費の適用を受ける場合、確定申告の際に概算経費の方式を選択できます。

そのため、申告する収入や経費が定まってから、最適な方式を選択できるのです。

ただし、確定申告を行う際、以下の書類をあわせて提出する必要があるため、注意してください。

対象者 必要な書類
個人 所得税青色申告決算書(一般用)付表(医師及び歯科医師用)
法人 社会保険診療報酬に係る損金算入に関する明細書

医療法人が概算経費を採用する際の注意点

ここでは、概算経費を用いて計算する際の注意点を紹介します。

実額経費の方が有利なケースもある

概算経費よりも実額経費の方が有利なケースもあることを覚えておきましょう。

具体的には、人件費や賃料、リース料が高いケースなどです。

例えば、社会保険診療報酬が「3,000万円」、自由診療収入が「0円」、賃料およびリース料以外の経費が「1,800万円」の場合、概算経費は「2,150万円」になります。

しかし、賃料およびリース料が年間で「2,400万円」の場合、実額経費の方が金額が大きくなります。

概算経費では、会計処理の手間を省けるというメリットは享受できますが、税金対策を優先するのであれば実額経費で計算を行いましょう。

保険診療分のみに適用される

概算経費を適用できるのは、保険診療に関連した経費に限ります。

自由診療で使った経費は別途計算しなくてはいけません。

それぞれの計算方法を混同していたり、集計時に漏れがあったりすると税務調査で指摘されてしまう可能性があります。

ちなみに保険診療と自費診療のどちらにもかかる経費については、按分して計算しなくてはいけません。

更正の請求ができない

実額経費で計算する場合、更正の請求を行うことはできません。

更正の請求とは、確定申告で誤りがあった場合などに正しい額に訂正することを求める手続きのことです。

例えば、概算経費で確定申告を行った場合で、実額経費の方が税負担を抑えられることに後から気づいたとしても訂正はできません。

確定申告を行う前に実額経費と概算経費のどちらが良いか、事前にシミュレーションを行うことをおすすめします。

問題点が指摘されている

概算経費に関しては、課税の公平の観点から問題ではないかと指摘されたことがあります。

例えば、自由診療報酬が多額であるにも関わらず、概算経費を適用しているケースが問題視されていました。

その結果、平成26年分以後は収入金額が7,000万円以上である場合、概算経費が適用されないという決まりが定められました。

他にも実額経費と概算経費の差額が大きいケースがあったり、特例の有効性が検証されていなかったりすることから、今後も税制改正の動きに注意が必要です。

医療法人の概算経費に関するよくある質問

ここでは、医療法人の概算経費に関するよくある質問を紹介します。

専従者給与を必要経費に算入すべき?

専従者給与とは、事業主の家族に支払われる給与のことです。

原則、専従者給与は必要経費として認められていません。

しかし、一定の要件を満たしている場合は必要経費として認められる可能性があります。

自由診療の経費はどうすればいい?

自由診療で使った必要経費に関しては、概算経費で算上することはできません。

保険診療と自由診療で使った経費は別々の計算が必要です。

また、保険診療と自由診療のどちらにも使った経費は按分して計算する必要があります。

概算経費は個人事業主にも適用される?

概算経費の適用対象者は、医業や歯科医業を営む個人事業主、および法人です。

ただし、個人事業主に関しても事業年度の収入が基準以下である場合にのみ、概算経費の適用が認められています。

ちなみに柔道整復師やあんま、はり業、助産師、介護福祉士などは、概算経費の適用対象に含まれないため注意してください。

記事まとめ:医療法人の経費についてのご相談は七福計画株式会社へお任せください

今回の記事では、医療法人に適用される概算経費に関する基礎知識をはじめ、計算方法や概算経費のメリット、注意点などについて解説しました。

概算経費の特例を利用することで、会計処理の手間を省ける可能性がありますが、適用を受けるにはいくつかの要件を満たす必要があります。

会計処理に関してお困りごとがございましたら、七福計画株式会社にご相談ください。

当社がこれまでサポートしてきた相談件数は3,000件以上に及びます。

専門家が手厚くサポートしており、オンラインでのご相談も対応可能です。

公式サイトからお気軽にお問い合わせください。

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