
医療法人のガバナンスとは?概要から取り組むべきこと等を徹底解説!
医療法人の経営には、健全な組織運営と社会的信頼の確保が欠かせません。
そのためにはガバナンスの強化が重要です。
本記事では、医療法人のガバナンスの基礎から、社団と財団の違い、具体的な強化策、そしてガバナンスがもたらすメリットまで解説します。
医療法人のガバナンスを強化したい場合は、ぜひ参考にしてください。
ガバナンスとは
ガバナンスとは、組織や企業が健全かつ公平に運営されるように管理・監督する仕組みのことです。
また、経営陣や従業員、取引先、地域社会など多様な関係者の信頼を得るためにガバナンスは不可欠です。
たとえば、経営判断の透明性や公正性を保ち、不正やリスクを未然に防ぐ役割があります。
コンプライアンス(法令遵守)は「守るべきルール」ですが、ガバナンスはそのルールを守るための組織全体の管理体制や仕組みを指します。
医療法人のガバナンスとは
医療法人は非営利性や公益性が強く求められるため、ガバナンスの強化が経営の安定や社会からの信頼獲得に直結します。
ここからは、医療法人のガバナンスについて解説します。
医療法人社団と医療法人財団の違い
医療法人はおおよそ「社団」と「財団」の2種類に分かれます。
社団は「人の集まり」を基盤に設立され、社員総会が最高意思決定機関となります。
社員総会では理事や監事の選任・解任、定款変更などの重要事項を決議します。
これに対し、財団は「財産の拠出」を基盤に設立され、評議員会が最高意思決定機関です。
財団は提供された財産を守りつつ運営され、評議員会が理事や監事の選任・解任、報酬決定などを担います。
なお、医療法人の種類については、以下の記事でも解説しています。あわせてご覧ください。
医療法人化のメリットやデメリットについて解説!リスク対策は保険で対応
医療法人社団のガバナンス
医療法人社団では、社員総会・理事会・監事が主要な機関です。
【概要図】
社員総会(最高意思決定機関)
├─ 理事会(業務執行機関)
│ └─ 理事長(代表権を持つ)
└─ 監事(監査機関)
社員総会が最高意思決定機関として、理事や監事の選任・解任、定款変更、重要事項の決定を行います。
理事会は業務執行機関であり、理事長を選出し、日常業務の執行や経営方針の策定を担います。
監事は業務や財産の監査を行い、不正やミスを防止します。
社員総会の構成員である「社員」は、医療法人の設立時に資格を取得し、法人の運営に関与します。
社団のガバナンスは、意思決定の透明性や公正性を確保するため、理事会や監事の役割が明確に定められています。
医療法人財団のガバナンス
医療法人財団では、評議員会・理事会・監事が主要な機関です。
評議員会は最高意思決定機関であり、理事や監事の選任・解任、役員報酬の決定、定款変更などを行います。
【概要図】
評議員会(最高意思決定機関)
├─ 理事会(業務執行機関)
│ └─ 理事長(代表権を持つ)
└─ 監事(監査機関)
理事会は業務執行機関として、理事長を選出し、財団の目的に沿った事業運営を担います。
監事は業務や財産の監査を行い、財団の健全な運営を支えます。
評議員は理事や職員と兼任できないため、経営と監督の分離が徹底されています。
財団のガバナンスは、拠出された財産の適正な管理と運営を重視し、意思決定の公正性が求められます。
ガバナンス強化のための取り組み
医療法人が社会から信頼され、持続的に発展するためにはガバナンス強化が不可欠です。
近年の制度改正により、役員報酬や監査体制、情報公開など、具体的な取り組みが求められています。
内部管理体制の整備
内部管理体制の整備は、医療法人の健全な運営の基盤です。
具体的には、職員の業務分掌や職務権限規程の明確化、業務マニュアルの整備、内部通報制度の導入などが挙げられます。
たとえば、診療報酬の請求や患者情報の管理など、医療現場で発生する多様な業務を標準化し、ミスや不正を未然に防ぐ仕組みを構築します。
さらに、定期的な内部監査や業務改善会議を実施し、現場の声を反映した運営を目指します。
これにより、業務の属人化や不正リスクを低減し、組織全体の自浄作用を高める効果が期待できます。
役員報酬の決定手続きの明確化
平成28年の医療法改正以降、役員報酬の決定手続きが法的に明確化されました。
報酬額は社員総会や評議員会、理事会などで決議し、議事録を作成・保存する必要があります。
役員報酬の決定には、客観的な基準や第三者の意見を取り入れることが推奨されており、恣意的な報酬設定や不正な利益供与を防ぎます。
また、報酬額の妥当性を定期的に見直すことで、経営の透明性を高められるでしょう。
監査制度の導入
監査制度の強化もガバナンスの重要な柱です。
監事による内部監査に加え、一定規模以上の医療法人では公認会計士等による外部監査が義務付けられています。
外部監査は、財務の適正性や業務執行の健全性を第三者がチェックし、不正やミスの早期発見・是正が可能となります。
監査報告書は理事会や社員総会で共有され、経営陣の説明責任を強化します。
これにより、法人全体の信頼性を高めることができます。
情報公開の義務化
経営の透明性を高めるため、医療法人には財務諸表や事業報告書の公開が求められています。
ホームページや院内掲示などで情報を開示し、患者や取引先、地域社会からの信頼を得やすくします。
このような情報公開は、内部統制の強化にも寄与し、不正や隠蔽の抑止力となります。
さらに、行政機関への報告や外部監査の結果も公開することで、社会的責任を果たす姿勢を明確に示せます。
理事会の権限と責任の明確化
理事会は医療法人の業務執行を決定し、理事長や理事の職務を監督します。
近年の法改正で、理事長および理事には忠実義務や任務懈怠時の損害賠償責任が明記されました。
理事会の議事録作成や意思決定プロセスの記録保存も義務化され、経営判断の透明性や説明責任が強化されています。
これにより、組織運営の健全化が進み、社会からの信頼を高めることができます。
ガバナンス強化によって得られるメリット
医療法人がガバナンスを強化することで、経営基盤の安定や社会的信頼の向上、持続的成長など多くのメリットが生まれます。
ここでは、ガバナンス強化によって得られるメリットを解説します。
企業価値の向上
ガバナンスを強化することで、経営の透明性や公正性が高まり、社会的信用が向上します。
その結果、優秀な人材の確保や新たな資金調達が容易になり、法人の成長力を高めることが可能です。
さらに、医療法人のブランド価値や社会的評価も向上し、地域医療への貢献度が高まります。
会計監査の導入によって、財務情報の信頼性が高まり、経営判断に必要な情報を適時に把握できる体制が整うことで、経営力の底上げにもつながります。
不祥事の防止
内部統制や監査制度の充実により、不正やミスの早期発見・是正が可能となります。
ガバナンス体制が整っている法人は、不祥事の発生リスクを大幅に低減できます。
たとえば、診療報酬の不正請求や情報漏洩など、重大なトラブルを未然に防ぐ効果があります。
会計監査人による議事録や業務プロセスのチェックを通じて、理事会の形骸化を防ぎ、実質的な議論や意思決定が活性化する点も大きなメリットです。
労働環境の改善
公正な評価や報酬制度、明確な業務分担が実現することで、従業員のモチベーションが向上し、働きやすい環境が整備されます。
そのため、離職率の低下や人材の定着にもつながります。
さらに、ハラスメントや労働トラブルの予防にも効果的です。
ガバナンス強化によって、現場の声が経営に反映されやすくなり、管理部門と現場の連携も深まります。
持続的な成長力の向上
ガバナンス強化は、経営リスクの低減や意思決定プロセスの明確化をもたらします。
その結果、環境変化にも柔軟に対応できる持続的な成長基盤が築かれます。
新規事業への参入や医療サービスの拡充にも積極的に取り組めるようになるでしょう。
監査の導入によって、収益管理や経営課題が可視化され、課題解決に向けた組織的な取り組みが強化されます。
財務体質の強化
透明性の高い経営や外部監査の導入により、財務状況の健全化が進みます。
金融機関や投資家からの信頼も高まり、資金調達が円滑になることで、事業拡大や設備投資も進めやすくなります。
法人税や消費税などの税務リスクも適切に管理できるようになり、税負担が軽減される可能性も高まるでしょう。
正確な財務数値に基づいた経営判断が可能となり、経営の安定性が増します。
社会的責任の遂行
医療法人は公益性の高い組織です。
ガバナンス強化により、患者や地域社会への説明責任を果たし、社会的信頼を獲得できます。
これが法人の社会的使命の実現にもつながり、持続的な地域医療の発展に貢献します。
会計監査の導入によって、法人内の連携や管理能力が高まり、地域医療構想の推進や病院間連携にも貢献できるようになるでしょう。
医療法人についてのご相談は七福計画株式会社へお任せください
医療法人のガバナンス強化は、経営の安定化や社会的信頼の向上、持続的な成長など、多くのメリットをもたらします。
経営体制や内部管理、監査制度の整備を進めることで、透明性の高い法人運営が実現し、長期的な発展につながるでしょう。
医療法人経営においてガバナンスや税務、リスクマネジメントなどでお悩みの際は、七福計画株式会社にご相談ください。
多くの医療法人支援実績を持つ専門家が組織の現状分析から最適な改善策の提案、実務サポートまでワンストップで対応します。
最新の法改正や経営課題にも柔軟に対応し、安心して経営に専念できる環境づくりを全力でサポートします。
医療法人の未来を見据えた経営のご相談は、ぜひ七福計画株式会社にお任せください。