
医療法人の経営情報等報告の義務化とは?データベースや記載例を解説
「医療法人の経営情報が義務付けられた理由とは?」
「経営情報報告の記載例や様式はどこで探せる?」
と疑問をお持ちの方はいませんか。
令和5年5月における医療法の改正により、医療法人の経営情報報告が義務化されました。
しかし、経営情報報告の内容や記載方法などがわからない方も少なくありません。
そこで本記事では、経営情報報告の義務化に関する基礎知識をはじめ、医療法人が報告すべき経営情報、よくある質問について解説します。

医療法人における経営情報報告の義務化とは?
令和5年5月における医療法等の改正により、医療法人には運営する病院などの経営情報を報告することが義務付けられました。
会計年度が終了してから「3ヵ月以内」に、医療法人は都道府県知事に経営情報を提出する必要があります。
ちなみに元から提出が必要な決算届に代わるものではなく、医療法人は追加で経営情報報告を実施しなくてはいけません。
医療法人に関する基礎知識については、以下の記事を参考にしてください。
関連記事:医療法人化のメリットやデメリットについて解説!リスク対策は保険で対応
厚生労働省による概要
厚生労働省は生産年齢人口の急激な減少、医療資源の地域格差を課題に挙げています。
そこで医療法人の経営情報をデータベース化することで、医療法人体制の確保に必要な政策の企画・立案、国民に向けた説明などを行う際に役立てると言います。
報告が義務付けられている対象は「全ての医療法人」です。
収集データは属性に応じてグルーピング化した上で、国民に公表されます。
経営情報報告の義務化に関しては、厚生労働省が資料を公開しています。
参照:厚生労働省「医療法人に関する情報の調査及び分析等について」
医療法人が報告すべき経営情報
それでは、医療法人はどのような情報を報告する必要があるのでしょうか?
以下で、報告が求められている経営情報を紹介します。
病院等の基本情報
まず病院等の基本情報を記載する必要があります。
具体的には以下の通りです。
項目 | 詳細 |
---|---|
医療法人を表す番号 | ①医療法人整理番号 ②法人番号 |
医療機関を表す番号 | ①病床・外来管理番号 ②医療機関コード |
病院等の名称、所在地等 | ①法人名及び病院名(診療所名) ②役員数及び職員数 ③病院等の所在地 ④期間 ⑤消費税の経理方式 ⑥主たる診療科 |
医療法人を表す番号・医療機関を表す番号
医療法人を表す番号・医療機関を表す番号に関して、それぞれ以下の場所で確認することが可能です。
- 医療法人整理番号:医療法人マスタ
- 法人番号:国税庁法人番号公表サイト
- 病床・外来管理番号:調査案内もしくは医療機関マスタ
- 医療機関コード:地方厚生(支)局のホームページ
病院等の名称、所在地等
病院等の名称、所在地等の詳細について、以下の表でまとめました。
項目 | 詳細 |
---|---|
法人名及び病院名(診療所名) | 医療法人の名称及び病院等の名称を省略せずに記載する。 |
役員数及び職員数 | 7月1日時点における役員の人数、および医療法人が直接雇用し当該病院等の業務に従事する職員の人数を記載する。 |
病院等の所在地 | 「都道府県」「市区町村」「二次医療圏」を選択し「町域」を記載する。 |
期間 | 報告対象の会計期間を記載する。 |
消費税の経理方式 | 適用している経理方式(税抜、税込など)を選択する。 |
主たる診療科 | ※下記見出しで詳細を説明。 |
役員及び職員の人数
7月1日時点(基準となる期日)で、「病院等で働く役員及び職員の人数」を報告する必要があります。
医師や歯科医師、薬剤師、看護職員、保健師など、職種別に人数を記載してください。
①常勤職員と非常勤職員を区分できる場合と、②常勤職員と非常勤職員を区分できない場合で記載場所が異なるため注意が必要です。
主たる診療科
主たる診療科は「診療所」のみが対象です。
7月1日時点(基準となる期日)の直近1ヵ月分、3ヵ月分など、診療所の実態が把握できる期間において、実績等で5割を超える患者数の診療科を選びます。
いずれの診療科も5割を超えていない場合、患者数の多い順に3つの診療科を記載します。
主たる診療科は以下から選択してください(診療科がない場合は読替え可能なものか、その他の診療科を選択してください)。
主たる診療科 |
---|
内科・外科・産婦人科・呼吸器内科・呼吸器外科・産科・循環器内科・心臓血管外科・婦人科・消化器内科(胃腸内科)・乳腺外科・リハビリテーション科・腎臓内科・気管食道外科・放射線科・神経内科・消化器外科(胃腸外科)・麻酔科・糖尿病内科(代謝内科)・泌尿器科・病理診断科・血液内科・肛門外科・臨床検査科・皮膚科・脳神経外科・救急科・アレルギー科・整形外科・歯科・リウマチ科・形成外科・矯正歯科・感染症内科・美容外科・小児歯科・小児科・眼科・歯科口腔外科・精神科・耳鼻咽喉科・心療内科・小児外科・その他の診療科 |
参照:厚生労働省「医療法人に関する情報の調査及び分析等の取扱い(第2版)」
病院等の収益及び費用の内容
続いては、病院等の収益及び費用の内容を記載してください。
詳細は以下の通りです(病院の場合)。
病院等の収益及び費用の内容 |
---|
医業収益・入院診療収益(保険診療収益・公害等診療収益・その他の診療収益を含む)・室料差額収益・外来診療収益(保険診療収益・公害等診療収益・その他の診療収益を含む)・その他の医業収益(保健予防活動収益・運営費補助金収益を含む)・医業費用・材料費(医薬品費・診療材料費・医療消耗器具備品費・給食用材料費を含む)・給与費(役員報酬・給料・賞与・賞与引当金繰入額・退職給付費用・法定福利費を含む)・委託費(給食委託費を含む)・設備関係費(減価償却費・器機賃借料を含む)・研究研修費・経費(水道光熱費を含む)・控除対象外消費税等負担額・本部費配賦額・医業利益(又は医業損失)・医業外収益(受取利息及び配当金・運営費補助金収益・施設設備補助金収益を含む)・医業外費用・支払利息・経常利益(又は経常損失) ・臨時収益(運営費補助金収益・施設設備補助金収益)・臨時費用・税引前当期純利益(又は税引前当期純損失)
法人税、住民税及び事業税負担額・当期純利益(又は当期純損失) |
参照:厚生労働省「医療法人に関する情報の調査及び分析等の取扱い(第2版)」
職種別の給与総額・人数
職種別の給与総額、および人数を記載しましょう。
職種の詳細は以下を参考にしてください。
職種別の給与総額 |
---|
医師・歯科医師・薬剤師・看護職員(保健師・助産師・看護師・准看護師)・その他の医療技術者等(診療放射線技師・臨床工学技士・リハビリスタッフ・歯科衛生士・歯科技工士・栄養士等・社会福祉士・精神保健福祉士・保育士・看護補助者・事務職員・その他の職員) |
参照:厚生労働省「医療法人に関する情報の調査及び分析等の取扱い(第2版)」
医療法人の経営情報報告に関するよくある質問
ここでは、医療法人の経営情報報告に関するよくある質問を紹介します。
経営情報のデータベースとは?
経営情報のデータベースとは、医療の置かれている現状と実態を把握するために導入されたプラットフォームです。
データベースの概要を以下にまとめました。
対象 | 原則、全ての医療法人 |
---|---|
収集する情報 | 病院及び診療所における収益及び費用並びに、任意項目として職種別の給与及びその人数 |
公表方法 | グルーピングした分析結果の公表 |
その他 | 研究者等が公益目的の研究を行う場合には、社会保障審議会での審査を経てデータベースに収蔵された情報を提供できる |
参照:厚生労働省「医療法人に関する情報の調査及び分析等について」
様式はどこでダウンロードできる?
報告書の様式は「厚生労働省の公式ホームページ」からダウンロード可能です。
様式の種類は医療法人のタイプによって変わってきます。
【直接入力用(様式に直接入力するタイプ)】
- 病院:様式1
- 病院:様式1-2 ※ 経過措置
- 診療所:様式2
- 診療所:様式2-2 ※ 経過措置
- 報告対象外報告書:様式3
【会計ソフト連携用(横一列の入力用シートを設けているタイプ)】
- 病院:様式1(会計ソフト連携用)
- 病院:様式1-2(会計ソフト連携用) ※ 経過措置
- 診療所:様式2(会計ソフト連携用)
- 診療所:様式2-2(会計ソフト連携用)
経営情報の記載例・記載方法は?
経営情報の記載例は公開されていませんが、記載方法は厚生労働省の「医療法人に関する情報の調査及び分析等について」で確認できます。
項目ごとに細かく説明されているため、ぜひ上記資料を参考にしてください。
経営情報の提出先は?
経営情報の提出先は「都道府県知事」になります。
経営情報がデータベース化され、国民に公表されるまでの流れは以下の通りです。
- 医療法人が経営情報を都道府県知事に報告する
※G-MISを介して都道府県(および国)に報告する - 国(厚生労働省)が都道府県に情報提供を求める
- 都道府県が情報を報告・提供する
- 国(厚生労働省)が情報をグルーピング化し、分析結果を公表する
経営情報を報告しなかった場合、罰則はある?
経営情報を報告しなかった場合の罰則は設けられていません。
しかし、義務化されているため、医療法人は経営情報を期間内に報告する必要があります。
経営情報報告を含め、何かお困りごとがございましたら七福計画株式会社にご相談ください。
経営支援から資金対策、相続など経営に関するさまざまな支援を行っています。
記事まとめ:医療法人についてのご相談は七福計画株式会社へお任せください
今回の記事では、医療法人の経営情報報告に関する基礎知識について解説しました。
医療法人は決算届に加え、経営情報を提供することが義務付けられています。
しかし、経営情報で報告する項目が多く、準備が進められていない医療法人も少なくありません。
経営情報報告に関してお悩みの方は、ぜひ七福計画株式会社にお問い合わせください。
七福計画株式会社は、累計相談件数3,000件以上の実績を誇り、オンラインでのご相談も受け付けています。