
持分なし医療法人への移行方法とは?メリットやデメリットを解説!
「持分なし医療法人のメリットとは?」
「いつから持分なし医療法人への移行が進められた?」
と疑問をお持ちの方はいませんか。
持分なし医療法人とは、払戻しや残余財産の分配を受ける権利がない法人のことです。
平成19年4月1日以降に設立された医療法人は持分なし医療法人となっており、持分なし医療法人への移行が進められています。
今回の記事では、持分なし医療法人の基礎知識をはじめ、持分なし医療法人のメリット・デメリット、持分なし医療法人への移行の流れなどについて解説します。

持分なし医療法人とは?
まずは持分なし医療法人の基礎知識について確認していきましょう。
持分とは
持分(もちぶん)とは、簡単に説明すると「医療法人における財産権」のことです。
厚生労働省の資料では、持分は「定款の定めるところにより、出資額に応じて払
戻し又は残余財産の分配を受ける権利」と定義づけられています。
医療法人は大きく「持分なし医療法人」と「持分あり医療法人」に分けられます。
以下でそれぞれの医療法人について確認していきましょう。
参照:厚生労働省『「持分なし医療法人」への移行に関する手引書 ~移行促進税制を中心として~』
持分なし医療法人とは
持分なし医療法人とは、定款に出資持分に関する規定を設けていない、持分がない医療法人のことです。
平成18年の医療法改正で医療法人の「非営利性」が目指されたことにより、平成19年4月1日以降に設立された医療法人は全て持分なし医療法人となっています。
参照:厚生労働省『認定医療法人制度の延長等について』
持分あり医療法人とは
持分あり医療法人とは、定款に出資持分に関する規定を設けている医療法人のことです。
社員資格を喪失した持分の払い戻し、および医療法人の解散時に分配を受けられる権利が認められています。
持分なし医療法人への移行が進められているものの、令和4年度における持分あり医療法人は66%となっており、移行に時間がかかっているのが現状です。
持分あり医療法人については、以下の記事でも説明しています。
関連記事:医療法人の持ち分ありの相続問題について|財産の移転方法を解説
持分なし医療法人と持分あり医療法人の違い
それでは、持分なし医療法人と持分あり医療法人にはどのような違いがあるのでしょうか?
以下の表でそれぞれの違いを項目ごとにまとめました。
持分なし医療法人 | 持分あり医療法人 | |
---|---|---|
解散時の財産 | 出資者に財産は戻ってこない(国のものになる) | 出資者が出資割合に応じた財産を受け取れる |
持分の買い取り請求 | 出資分を超える金額を支払う必要がない | 出資分の割合に応じて支払う必要がある |
出資者が死亡時の対応 | 相続はできないが、相続税の納税義務はない | 相続することが可能だが、相続税が発生する |
医療法人を解散する理由については、以下の記事で詳しく解説しています。
関連記事:医療法人を解散する理由とは?手続きや残余財産の処理方法を紹介
持分なし医療法人のメリット
持分なし医療法人に移行するメリットとして、長期的に安定した事業運営が可能になる点が挙げられるでしょう。
持分あり医療法人のように、純資産に応じて評価額が高騰することがないためです。
出資金とは異なり、額面金額が評価対象となります。
持分あり医療法人の場合、経営が優良であればあるほど多くの税金を納める必要があります。
一方、持分なし医療法人は財産面での承継が必要ないため、相続税などの心配をする必要もありません。
持分なし医療法人のデメリット
持分なし医療法人のデメリットとしては、医療法人解散時の財産が全て国のものになる点が考えられます。
出資した割合に応じた医療法人の財産を請求することもできません。
加えて、持分あり医療法人から持分なし医療法人に移行する場合、複雑なプロセスを踏む必要があります。
持分なし医療法人への移行を検討している方は、ぜひ七福計画株式会社にご相談ください。
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持分なし医療法人への移行の流れ
持分あり医療法人から持分なし医療法人に移行する流れを確認しておきましょう。
定款変更
持分なし医療法人への移行を検討している場合、まず「定款変更」の手続きが必要です。
移行計画の申請、および定款変更に関して、社員総会で議決します。
医療法人を構成する社員総会については、以下の記事で解説しているので、チェックしてみてください。
関連記事:医療法人における役員(理事・理事長・監事)の概要と仕組み
厚生労働省に移行計画・都道府県に定款変更を申請
続いては、厚生労働省に移行計画を申請しましょう。
厚生労働省により認定されたら、続いては定款変更を都道府県へ申請を行います。
定款変更には、移行計画の認定を受けた旨を記載します。
都道府県による定款変更の認可
都道府県による定款変更の認可を受けたら、移行に向けて具体的に動いていきます。
出資者の持分放棄の手続き、持分の払戻がある場合の対応を行っていきましょう。
持分の払戻を行う際は、後々のトラブルを避けるためにも払戻請求書や譲渡契約書などを書面で残しておくことが大切です。
持分なし医療法人への定款変更を社員総会で議決
続いては、持分なし医療法人への定款変更に関して社員総会で議決を取ります。
持分なし医療法人への定款変更を都道府県に申請
最後に持分なし医療法人への定款変更を都道府県に申請しましょう。
都道府県によって定款変更が認可されたら、持分なし医療法人への移行が完了です。
移行完了した旨を厚生労働省に報告しましょう。
持分なし医療法人への移行の詳細に関しては、厚生労働省の資料を参考にしてください。
参照:厚生労働省『「持分なし医療法人」への移行促進策のご案内』
持分なし医療法人に関するよくある質問
ここでは、持分なし医療法人に関するよくある質問に回答します。
いつから持分なし医療法人への移行が進められた?
平成18年の医療法改正を受けて、平成19年4月1日以降に設立された医療法人は全て「持分なし医療法人」となりました。
本改正においては、医療法人の「非営利性」を高めることも目的としています。
平成26年10月1日から平成29年9月30日までの3年間で、出資持分を放棄した医療法人に関しては、猶予税額が免除されました。
猶予税額を免除することで、持分なし医療法人への移行を促進する狙いがあります。
ただ、令和4年度においては、全医療法人のうち「66.0%」が持分あり医療法人という結果になりました。
このことから持分なし医療法人への移行に時間がかかっていることが伺えます。
持分なし医療法人はM&Aで売却できる?
以前までは他の医療法人に売却する場合、合併か事業譲渡を選択する必要がありましたが、平成28年9月から医療法人を会社分割してM&Aできるように変更になりました。
しかし、会社分割してM&Aできるのは持分なし医療法人に限られます。
持分あり医療法人は対象外となっているため注意が必要です。
持分なし医療法人を事業承継する方法とは?
持分なし医療法人を事業承継する方法は、①親族に継承するケースと②第三者に継承するケースによって異なります。
①親族に継承する場合、後継者を決めた後に「相続もしくは贈与」で出資持分を移転させ、親族を理事、理事長に選任する流れです。
②第三者に継承する場合は、専門家を介して承継先を見つけた後、出資持分を第三者に売却し、理事、理事長を選任します。
持分なし医療法人の相続税は?
持分なし医療法人の場合、財産権が認められていないため、相続することはできません。
つまり、相続税が発生することもないということです。
一方、持分あり医療法人では相続できますが、相続税が課税されます。
相続税を含む医療法人の法人税に関しては、以下の記事を参考にしてください。
関連記事:医療法人の法人税の税率は?普通法人との違いなどについて詳しく解説
記事まとめ:持分なし医療法人についてのご相談は七福計画株式会社へお任せください
今回の記事では、持分なし医療法人の基礎知識をはじめ、持分なし医療法人のメリットとデメリット、持分なし医療法人への移行の流れなどを解説しました。
持分なし医療法人とは、定款に出資持分に関する規定が設けられていない医療法人です。
現在は、医療法人の非営利性を求めるために、政府により持分なし医療法人への移行が推進されています。
しかし、持分なし医療法人への移行を検討しているものの、移行手続きが複雑で着手できていない医療法人も少なくありません。
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