医療法人における退職金の平均・相場は?計算方法を解説します
「医療法人における退職金の平均は?」
「医療法人では退職金はどう計算する?」
と疑問をお持ちの方はいませんか。
医療法人では、退職金制度を導入しているところが多く見受けられます。
しかし、退職金や計算方法、退職金を用意する方法は法人によってさまざまです。
そこで本記事では、医療法人における退職金の平均・相場、計算方法、医療法人が退職金を用意する方法などについて解説します。
退職金制度の導入を検討している方は、ぜひ本記事を参考にしてください。
医療法人と退職金
医療法人では、退職金を受け取れるのでしょうか?
最初に医療法人と退職金について基礎知識を確認しておきましょう。
医療法人とは
厚生労働省の公開している資料「医療法人の基礎知識」では、医療法人は以下のように定義づけられています。
医療法人とは、病院、医師もしくは歯科医師が常時勤務する診療所又は介護老人保健施設を開設することを目的として、医療法の規定に基づき設立される法人
引用元:厚生労働省「医療法人の基礎知識」
医療法人は「国民の健康維持に寄与する」ことを目的としており、非営利性が確立されている点が特徴的です。
医療法人の資産運用に対する考え方については、以下の記事で解説しています。
関連記事:医療法人は資産運用をしていいの?考え方やおすすめの資産運用を紹介
医療法人は大きく「社団医療法人」と「財団医療法人」に分けられます。
- 社団医療法人:人の集まりを基盤とした医療法人
- 財団医療法人:財産を基盤とした医療法人
現存する医療法人の多くは「社団医療法人」となっています。
退職金とは
退職金制度とは、ある年数以上勤務を継続した者に対して、退職する際に金銭を支給する制度のことです。
同制度は設置義務がないため、退職金制度を運用していない医療法人も見受けられます。
従業員のモチベーション維持や離職率低下、採用活動における優位性の確立など、退職金制度で得られるメリットはさまざまです。
退職金の種類
退職金はいくつかの種類に分けることが可能です。
退職金の種類 | 概要 |
---|---|
退職一時金制度 | 法人が積み立てた金銭を退職時に一括で支給する退職金 |
中小企業退職金共済 | 法人が毎月掛け金を支払うことで、退職時に中小企業退職金共済から一括で支給される退職金 |
確定給付企業年金制度 | 退職後に一定期間支給される退職金 |
企業型確定拠出年金制度 | 法人が毎月積み立てた掛け金で、受給者が年金資産の運用を行う退職金 |
多くの医療法人では「退職一時金制度」が採用されています。
医療法人で退職金はもらえる?
医療法人においては、退職金が支給されることが多いです。
厚生労働省の資料によると、医療・福祉業界において退職金制度がある割合は「75.5%」にも及ぶことがわかりました(令和5年調査)。
医療法人が退職金を設置する理由としては、「良い人材を確保するため」、「離職率を低下させるため」などの理由が挙げられるでしょう。
参照:厚生労働省「退職給付(一時金・年金)制度」
大規模の病院は退職金をもらいやすい
医療法人の中でも、大規模の病院は退職金制度が設けられている傾向にあります。
十分な資金力がある法人の方が待遇が充実しているケースが多いためです。
小規模なクリニックなどでは、従業員の退職金を用意する余裕がないといったケースも少なくありません。
しかし、病院の規模が多くても「勤続年数が短い」、「退職が自己都合」などの理由で退職金が支給されないことがあります。
医療法人における退職金の平均・相場は?
医療法人における退職金は勤続年数や月額報酬(役職)、医療法人の規模などによって変わってきます。
以下、役職別に退職金の目安をまとめました(あくまで一例です)。
役職 | 退職金 |
---|---|
看護師(30年) | 800万〜900万円程度 |
看護師(定年) | 800〜2,000万円程度 |
医師 | 1,000~2,000万円程度 |
役員 | 最終報酬月額×従事年数(役員としての在任年数)×功績倍率 |
医療法人における役員の位置付けに関しては、以下の記事を参考にしてください。
関連記事:医療法人における役員(理事・理事長・監事)の概要と仕組み
医療法人における退職金の計算方法
退職金の計算方法には、いくつかの種類があります。
主な計算方法は以下の通りです。
退職金の計算方法 | 概要 |
---|---|
定額制 | 勤続年数と退職事由で退職金額が決まる制度 |
基本給連動型 | 勤続年数と基本給、退職事由で退職金額が決まる制度 |
別テーブル制 | 勤続年数と退職理由、役職・等級で退職金額が決まる制度 |
ポイント制 | 付与されたポイントで退職金額が決まる制度 |
一般的に就業規則などに退職金の計算方法が明記されています。
以下でそれぞれの計算方法について詳しく確認していきましょう。
定額制
定額制とは、「勤続年数」と「退職事由」で退職金額を決める制度のことです。
以下のように勤続年数が長くなれば長くなるほど、支給される退職金も増えていきます。
- 勤続10年:100万円
- 勤続20年:300万円
- 勤続30年:600万円
- 勤続45年:1,000万円
※定額制のイメージです。
定額制では個人の成果や貢献度が考慮されない点が特徴的です。
退職事由は、退職の理由が「医療法人の都合」か「自己都合」かによって判断されます。
基本給連動型
基本給連動型とは、「勤続年数」や「基本給」、「退職事由」で退職金額を決める制度のことです。
退職時に基本給が上がっていれば、支給される退職金額も高くなります。
基本給連動型では、以下の計算式で退職金額を算出します。
それぞれの係数は医療法人によって異なります。
別テーブル制
別テーブル制とは、「勤続年数」や「退職事由」、「役職・等級」で退職金額を決める制度のことです。
基本給連動型と仕組みは似ていますが、基本給連動型が「基本給」で計算するのに対し、別テーブル制では「役職・等級」で計算します。
従業員にとっては、退職時にどれだけ高い役職・等級にいるかが重要です。
ただし、役職がついていない従業員からの不満が生まれやすい点が懸念されます。
ポイント制
ポイント制とは、「従業員が獲得したポイント」で退職金額を決める制度のことです。
「勤続年数」や「基本給」、「退職事由」、「役職・等級」など、ポイントはさまざまな観点を考慮して付与されます。
ポイント制では、以下の計算式で退職金額が算出されます。
どの項目にどれだけのポイントがつくかは、医療法人によって異なります。
独自の基準で退職金額を決定できるため、近年はポイント制を採用する医療法人が増えています。
医療法人が退職金を用意する方法
それでは、医療法人はどのように退職金を用意すればいいのでしょうか?
代表的な方法は以下の通りです。
- 生命保険
- 内部留保
- 中小企業退職金共済
以下で退職金を用意する方法を詳しく紹介します。
生命保険
生命保険(生保)とは、死亡や病気、ケガ、介護などに備えるための保険制度です。
生命保険は、退職金資金を準備する方法として代表的でしょう。
退職金に適した生命保険は以下の2パターンです。
退職金に適した生命保険 | 概要 |
---|---|
長期平準定期保険 | 経営者や役員に万が一の事態が起きた時に備えて、保障および退職金を確保するための保険 |
養老保険 | 役員や従業員に万が一の事態が起きた時に備えて、保障および退職金を確保するための保険 |
法人名義で生命保険に加入している場合、保険金は経費として計上できます(一定の要件を満たす必要があります)。
加えて、途中解約した場合でも解約返戻金が返ってきます。
ただし、支払う保険料よりも返ってくる金額(解約返戻金もしくは満期金)が少ない点が懸念されるでしょう。
医療法人が加入できる生命保険については、以下の記事で解説しています。
関連記事:医療法人は生命保険に加盟すべき?メリットや選び方を紹介
内部留保
内部留保(利益剰余金)とは、法人内に蓄積される財源のことです。
内部留保は以下の方法で計算されます。
非営利法人である内部留保は、配当や分配をすることはできません。
そのため、内部留保を退職金にすることで、役員や従業員に還元することが可能になります。
しかし、退職金は高額になりやすい項目です。
内部留保を退職金にする場合は、他の方法とも組み合わせて退職金を準備しなくてはいけません。
中小企業退職金共済
中小企業退職金共済(中退共)とは、中小企業が従業員の退職金を計画的に用意できるようにした国の制度のことです。
中小企業(医療法人を含む)が毎月掛け金を積み立てて、退職金を計画的に用意できます。
なお、中小企業かどうかは資本金、および常時使用する従業員数などで判断されます。
同制度は国が運営する制度なので安心ですが、保険機能がないため、万が一の時にまとまった金額を用意できません。
事業主が毎月共済に掛金を支払い、従業員の退職金を積み立てていく制度です。
記事まとめ:医療法人についてのご相談は七福計画株式会社へお任せください
今回の記事では、医療法人における退職金額の平均・相場を解説しました。
退職金額は医療法人の規模や勤続年数、月額報酬、退職事由などによって変動します。
また、退職金額の計算方法にはいくつか種類があります。
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